窮士帰心(窮士心を帰す)(「淮南子」)
年賀状が悩みのタネになることがそもそも・・・。

歳をとったら無用の用じゃ。わかっておるのかな?
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戦国のころ、斉の有力者・田子方が馬車に乗って出かけた時、
見老馬於道、喟然有志焉。
老馬を道に見るに、喟然(きぜん)として志有り。
道端にいる老いたウマを見た。じろりと駆け去ろうとするこちらの馬車を見て、何やら言いたいことがあるように、見えた。
田子方は御者に訊いた、
此何馬也。
これ、何の馬なる。
「あれはどういうウマなのか、わかるか」
御者は答えた、
故公家畜也。罷而不為用、故出放之也。
故(もと)の公家の畜なり。罷めて用いられず、故にこれを出放す。
「もとは国家が使っていたウマです。老いて役に立たなくなったので、民間に下げ渡されたのですな」
「ふーん」
田子方はしばらく考えて、言った、
少尽其力、而老棄其身、仁者不為也。
少にしてその力を尽くし、老いてその身を棄つるは、仁者為さざるなり。
「若いころに力を尽くして仕事をさせておいて、老いたからといって追い出してしまうのは、よき人間のやることではないよな」
そして、
束帛而贖之。
束帛してこれを贖えり。
束ねた布(貨幣の代わり)と交換にしてウマを引き取った。
窮士聞之、知所帰心矣。
窮士これを聞きて、心を帰するところを知れり。
自由民(「士」)で生活に困窮している者たちは、このことを聞いて、自分たちが誰を支持すべきかを知った。
SNSで情報が拡散されたのでしょうか。
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「淮南子」人間訓より。うっしっし。肝冷庵一族は年賀状を書かないので、ヒマに任せて考えてみます。
あ)老いたウマを大切にするといいことがあるかも。老害をうまく利用したものです。老害も大切にしてやろうではないか(してくだされ)。
い)いやいやそうではない。天下の士のうち「窮」しているやつらだけが心を帰してくるのだから、損だ。年金制度が崩壊する。
みなさんはいずれの意見に与みしますか。
実はこのお話は単なる「寓話」ではなく、下剋上の時代に、斉侯(姜姓)から国を乗っ取ろうとしていた田子方の行動である、という認識があると、一気に陰影のあるエピソードになりますね。
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