数千雞雛(数千の雞雛)(「顔氏家訓」)
毎日ぴいちくとうるさいぜ。うるさいやつはこうだ!
―――と、いろいろうるさいやつ(上司や発注元など。おやじも?)をやっつけると、こんなことになるかも知れません。

四国の代表的な妖怪たちだ。たしかにヒヨコ軍団は比較的怖ろしそうである。
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六朝の梁の時代(502~557)のことだが、
有人、常以雞卵白和沐、云使髪光。
人の、常に雞の卵白を以て沐に和し、髪をして光らしむと云う有り。
いつも、ニワトリのタマゴの白身を使って髪を洗っているひとがいた。そうすると、髪がつやつやして若く見えるのだそうである。
毎沐輒破二三十枚。
沐するごとにすなわち二三十枚を破る。
洗うことに20~30個のタマゴを割っていた。
臨死、髪中但聞啾啾数千雞雛声。
死に臨んで、髪中にただ啾啾(しゅうしゅう)として数千の雞雛の声を聞けり。
彼が死ぬとき、髪の毛の中から、「ぴよぴよ」「ぴよぴよ」「ぴよぴよ・・・」と数千匹のヒヨコの声が聞こえてきたということだ。
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北斉・顔之推「顔氏家訓」第十六「帰心篇」より。亡くなった楳図かずお先生の「チキンジョージ」みたいではありませんか。フライドチキンばかり食っていると、進化したニワトリであるチキンジョージ博士に復讐されるんです。・・・という話だったと記憶しているのですが、なにしろ年寄の記憶ですからなあ。
顔之推はもと南朝・梁の貴族ですが、亡国の際に北朝に連行され、北朝でもさんざんな目にあった苦労人です。仏教にも深く帰依していた彼が、子孫に遺したのが「顔氏家訓」ですが、
含生之徒、莫不愛命。去殺之事、必勉行之。好殺之人、臨死報験、子孫殃禍、其数甚多、不能悉録耳。
含生の徒、命を愛しまざるなし。去殺の事は、必ず勉めてこれを行え。好殺の人、死に臨みて報験し、子孫に殃禍ある、その数甚だ多し。悉くは録する能わざるのみ。
生命のある者に、命を惜しまないものがあるだろうか。生物を殺さないように、できるだけ努力することじゃ。殺すのが大好き、という人には、死ぬときに報いがあるか、子孫に祟る。その例はあまりに多いので、わしの知っている事例をすべて述べるわけにはいかない(ほどじゃ)。
ということで、特に恐ろしいのを数例だけ抜き出した、というその筆頭がこの「ひよこ頭」です。他にはうなぎ食っていたら子どもがうなぎだったとか、ヒツジを見殺しにしたら死ぬときに「メー」と言って死んだ、とかです。
わたしも、好んでは殺さない方がいいと思います。
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