東坡三養(東坡の三養)(「東坡志林」)
何を食っても肥るやつは肥る。諦めなはれ。

少しは協力しますんにゃ。
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元符三年(1100)八月、
東坡居士、自今日以往、不過一爵一肉。
東坡居士、今日より以往、一爵一肉を過ごさず。
わたくし、在俗在野の士、東坡先生は、本日以降、食事の時にお酒は爵一杯(徳利一本をイメージしてください)、肉料理は一品まで、といたします。
一応、例外があります。
有尊客、盛饌則三之、可損不可増。
尊客有れば、盛饌すなわちこれを三にするも、損ずべきも増すべからず。
えらいお客さんとともにするときは、一番いい料理を出す時にはこれに三倍することにします。つまり徳利三本、肉料理三品、ただし、それ以下でいいときはそうします。それ以上にすることはしません。
えらい人には敵わんですからね。しかし、
有召我者、預以此先之、主人不従而過是者、乃止。
我を召す者有れば、預(あらかじ)めこれを以てこれに先んじ、主人従わずしてこれを過ごすは、すなわち止む。
わたしを招待する方があったとしても、先にこのことを申し上げておいて、招待側がそれに従わずにもっと出してきた時も、それ以上はいただきません。
招かれてタダメシだ、といっても余計には食わない。
以上、宣言しました。絶対です。
何故にとならば、
一曰、安分而養福。
一に曰く、分に安んじて福を養う。
その一。天分以上のことを求めず、しあわせを増やすため。
二曰、寛胃以養気。
二に曰く、胃を寛うして以て気を養う。
その二。胃を満腹にせず、健康度を増やすため。
三曰、省費以養財。
三に曰く、費を省きて以て財を養う。
その三。食費を節約して、持ち金を増やすため。
以上、福・気・財、三養のためです。
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「東坡志林」巻一より。物価が収入より上がりますから、節約するしかありませんね。東坡居士はこの年六十四歳(満年齢)、海南島にいます。翌年、許されて本土に戻り、都・開封に向かう途中、江蘇・常州に達したところで亡くなるので、①戻る途中で死ぬ程度の幸福、②あと一年しか生きてない、③流罪で財産ほとんど無し、です。
「じゃあ、こんな宣言してても役に立たなかったんだ」
「結果が出てないのなら話を聴く必要はない、われわれは忙しいからな」
「もっとためになる話なら聴きますわよ、もちろん」
と新自由主義のみなさんは嘲笑してどこかに行ってしまわれました。蘇東坡の、逆境でのこの楽天的な人生観にこそ学ぶべきことが・・・などと東洋的な古いこと言っている自分が情けない。まったくです。三ダケ(カネだけ、今だけ、自分だけ)のすぐれた思想を持つ現代のみなさんはすばらしいなあ。
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