起意漁利(漁利せんと起意す)(「清通鑑」)
誤字脱字が多くて薄っぺらいのは、肝冷庵のことではないんです。肝冷庵はカンナくずみたいなものだと思います。

アヘンも美味いのだと思うが塩やトンカツソース、おでん用みそなども常習性がある。
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清の道光十一年(1831)のこと、
太監張進幅素患胃気疼痛病症、吸食鴉片、已閲三十年。
太監・張進幅、もと胃気疼痛の病症を患いて、鴉片を吸食し、すでに三十年を閲す。
高級宦官の張進幅は、もとから胃の痛みを訴えて、治療用のアヘンを吸飲していた。もう三十年も使っていたのである。
最近では、単に治療に使うだけでなく、
経常与太監劉成、王幗裕、郭志等一起吸食。
経常、太監劉成、王幗裕、郭志等と一に起ちて吸食す。
いつも、宦官仲間の劉成、王幗裕、郭志らと一緒になって吸っていた。
さて、その張進幅が耳よりな話を聞きつけた。
天津県毎逢夏秋海船来時烟土較賤。即起意至彼多買烟土、熬食、転売漁利。
天津県、夏秋に海船の来時に逢うごとに烟土較賤なり、と。即ち彼に至りて烟土を多く買い、熬食し、転売して漁利せんと起意す。
「熬」は「いる」「火を通す」「あぶる」。「漁利」は「漁の利益」ではなくて「利を漁(あさ)る」。
北京の外港である天津に行くと、毎年の夏から秋にかけて、東シナ海を通ってやってくるヨーロッパからの海洋貿易船が来るたびに、精製アヘンが安く手に入るというのである。早速、その地に行って精製アヘンを大量に買い付け、自分であぶって楽しんだり、転売して儲けようと思いついたのである。
うちの理事さんみたいに頭いいですね。
ついに、今年の七月に、
帯同民人秦宝全赴天津県、輾転向元記呂老庭買得烟土一百六十余両。
民人・秦宝全を帯同して天津県に赴き、輾転して向元記・呂老庭より烟土一百六十余両を買い得たり。
一般人の秦宝全と一緒に天津県に行き、あちらこちら訪ねた上、向元商店の呂老庭というおとこから、精製アヘン百六十両余りを買い取ることができた。
一両≒40グラム弱、で計算すると6.4キログラムです。
ところが、
回京時、于朝陽門外被歩軍統領衙門番役、盤獲、解送刑部。
回京時に、朝陽門外で、歩軍統領衙門の番役に盤獲され、刑部に解送さる。
北京に戻ってきたとき、城門の朝陽門の外で、歩兵統括部隊事務所の交番勤めの衛士にごっそり見つかってしまい、そのまま検察に送致されてしまった。
そして、
経訊、供出同狄。
訊を経て、同狄を供出せり。
尋問されて、同じ仲間を白状した。
刑部の判決は同年10月8日に出ました。
張進幅は太監の職をクビになり、首枷をはめられて三か月間入牢、その後新疆で「奴」にされた。もちろん、劉成、王幗裕らもそれぞれ罪に応じた刑に処されたのである。
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「清通鑑」巻一八八より。知恵や能力はおカネ儲けのために使うのでなければ、持ち腐れだ。―――とみなさんは思っていると思うのですが、この人も見つからなければ「賢いひとだなあ」と称賛され尊敬されたのでしょう。だが失敗したので、「へへへ、ざまあないぜ、うすっぺらい知恵だ」という評価になってしまいました。みなさんも知恵を出し過ぎないように気をつけてください。
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