第勤此三事(ただこの三事に勤しめ)(「大唐新語」)
三つも勤しんでたら大変ですよね。

歩きながら本読んでると転ぶ。スマホだったら大丈夫なのに?
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唐の初期に江南や涼州など重要な地の太守を務めた李襲誉というひとは、
性倹約、好読書、写字数万巻。
性倹約、読書を好み、写字して数万巻あり。
生まれついての倹約家で、書物を読むのが大好きで、また、人の持っている書物を写して、一万巻ぐらいは持っていた。
彼は、一族の若い者(「子弟」)につねづね次のように言っていた。
吾不好貨財、以至貧乏。
吾、貨財を好まず、以て貧乏に至る。
わしは、お金や物品には興味が無いので、こんな貧乏になってしまった。
それでも、
京城賜田十頃、可以充食。河南有桑千株、可以充衣。写得書万巻、可以求官。
京城に賜田十頃あり、以て食に充つべし。
河南に桑の千株有り、以て衣に充つべし。
写して万巻の書を得、以て官を求むるべし。
長安近辺に帝から頂いた田んぼが十頃(1,000畝)ある。これだけあれば、一族が食べていくには困らないだろう。
河南地方に以前入手した桑畑があって、1,000本ぐらい植わっている。この桑の葉でカイコを飼って、生糸→絹→服を作れば、一族が着るものには困らないだろう。
写した書が一万巻になった。これを学んで教養を身に着け(当時は科挙試験は未整備)、役人になることができるだろう。
1畝は日本だとだいたい1アールなので計算がしやすいのですが、唐代のチャイナでは5.8アールだそですから、1,000畝は58ヘクタールになります。これは相当に広大な土地です。
汝曹第勤此三事、何求於人。
汝(なんじ)曹、第(ただ)この三事に勤しめば、何をか人に求めん。
おまえたちは、ただこの三つの事だけマジメにやりなさい。そうすれば、誰かに頼ったりする必要はなくなる。
と、唐・劉粛の「大唐新語」に書いてあったのを見て、感動しました。
右数語、可作家訓。故録之以示子孫。
右の数語、家訓と作すべし。故にこれを録して以て子孫に示す。
この数語は、我が家の「家訓」とするに相応しい。そこで、これをメモして、子孫に見てもらおうと思う。
ちゃんと読んどいてね。
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清・王士禎「香祖筆記」より。しかしこのいい人っぽい李襲誉でさえ、晩年は部下を杖で叩き殺したことを弾劾されて福建に流され、そこで死んだそうです。事情はいろいろあるんでしょうけど、パワハラで殺しちゃったんだから、まずいですよね。
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