不可加冠(加冠すべからず)(「秦書」)
外が暑すぎるんでしょう。溶けたアイスをジュースにして飲んでみました。やたら甘くて濃いので体にいいと思います。このようにわざわいを転じて福とすることができたのである。

首里の妖怪みみちりぼーじ(耳切坊主)は坊主の上に耳も切られているのでつるつるだ。服とか着やすい。
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四世紀前半、五胡十六国の時代に、短期間とはいえ華北一帯を統一することに成功した前秦の主(「天王」と名乗った)苻堅(在位357~385)は、いろんな人材を得ようとして、
征隠士張巨和至長安、賜以衣冠。
隠士・張巨和を征して長安に至らしめ、衣冠を以て賜らんとす。
山東の泰山に隠棲していた隠士・張巨和のところに車を遣わし、長安まで連れてきた。そして、(官職を持つ人物の)服と冠を下賜しようとした。
自分のもとで仕事をしてほしいというのである。この時、祭酒(国立大学の学長)を依頼しようとしたということだから、隠士に対して礼を尽くしたというべきであろう。しかし、張巨和は辞退した。
「朕がこのように頼んで居る。何故じゃ」
あわわ。うまく答えないと反逆や非礼を問われて死刑はもちろん、刻まれたりばらばらにされたり一族も皆殺しの刑です。
張巨和はお答えした。
年老頭禿、不可加冠。
年老い頭禿げ、冠を加えるべからざるなり。
わしめは年をとって頭がつるつるになってしまい、冠をかぶることができないのでございます。
そういって、(君主の前ではありえない失礼なことなのですが、)頭巾をとって頭をお見せした。頭巾は頭に巻いてしまえばいいのですが、冠は髪の毛をまとめたもとどりに冠ごと「簪」(しん)というかんざしを挿しこんで留めなければいけません。つるつる頭にはムリなのです。
「むむ、そうか、確かになあ。難しいなあ、わははは」
苻堅は機嫌よく辞退を許してくれました。
かくして張巨和は、
野服而入、既見求帰矣。
野服して入り、既に見(あ)いて求帰せり。
いなかものの畑仕事をするような服を着て、着替えもせずに君主に面会して、そのまま求めて帰ってきたのである。
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前秦・車頻「秦書」より(清・湯球編「三十国春秋輯本」所収)。いいなあ、つるつるあたまが福を呼んで無事解放されました。得しましたね。実際には、苻堅がこの時期の五胡のひとには珍しく雅量のある人だった、ということでもありますが。
なお、張巨和は辞退して泰山に帰る途中で、死んでしまいます。巨和は四世紀初頭の永嘉の乱(307~312)を逃れて泰山に隠居したということですから、それから五六十年経っており、もう八十とか九十の年齢です。その間、
修真服気、鑿地穴居。
真を修め気を服し、地を鑿ちて穴居す。
真の修行を行い、泰山の気を吸って、地面に穴をあけてそこに暮らしていた。
そうです。泰山を離れるとどんどん弱ってきて、早く泰山の気を吸いたがっていたのですが、間に合わなかったらしいのである。
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