被狗形相(狗に形相せらる)(「寒山集」)
あちこちでイヌに吠えられたり舌打ちされたりしております。

人間どもと一緒にされたら困るでわん。
・・・・・・・・・・・・・・・
唐の時代ですが、
我在村中住、衆推無比法。
我村中に在りて住み、衆推して比法無しとす。
わしが田舎の村に住んでいると、
まわりの者は「比べ物もない」と称賛してくれる。
少し自信も湧いて、
昨日到城下、仍被狗形相。
昨日城下に到るに、なお狗に形相せられたり。
昨日都会に出て来たところ、
やはりイヌに見つかってチェックされた。
このイヌたちは、ただのイヌではない。
或嫌袴太窄、或説衫少長。
或いは袴の太(はなは)だ窄(すぼ)まるを嫌い、或いは衫(さん)の少しく長きを説く。
あるイヌはわしのはかまの裾がたいへん狭くなっているのに眉をひそめ、
あるイヌはわしのシャツが少し長いのではないかと口上を垂れる。
都会の批評家たちである。
なるほど、
攣却鷂子眼、雀児舞堂堂。
鷂子(ようし)の眼を攣却せしむれば、雀児舞うこと堂々たらん。
「鷂」(よう)は猛禽の「ハイタカ」です。
ハイタカの目を引き攣らせて(動けなくして)しまえば、
スズメのガキどもが堂々と遊び回れることだ。
わしを批判して黙らせてしまえば、下らぬ者たちのしたい放題というわけじゃ。
・・・・・・・・・・・・・・・
「寒山集」より。はかまの裾が狭くなってたりシャツが長かったりしたら、それはわいわい言われて当然です。現世では、賢者であるかどうか、より、服装が都会風か田舎風かの方が重要でしょうから。
コメントを残す