災必及身(災い必ず身に及ぶ)(「觚賸」)
こんな危険なものを扱っているのですぞ。

人生〇〇を知るは憂患の始めなり。
・・・・・・・・・・・・・・・・
先贈君曰。
先贈君曰う。
亡くなった(称号を贈られたひと、すなわち)うちの親父が、こんなことを言っていた。
心して聞かなければなりません。
刻之為義、刀豎其側。将自戕也。
これを刻めば義を為すも、刀豎その側らにあり。まさに自ら戕(そこな)わんとす。
「刀豎」(とうじゅ)の「豎」は「豎子」と熟するように、「小さい、こども」のことですから、「刀豎」は小刀。いにしえ、木簡や竹簡に文字を刻んだり、刻んだ文字を削ったりするのに用いた「筆記道具」です。
それを刻めば意味を作り出す。だが、その時には(刻んだり削ったりする)小刀が側にある。自分自身を傷つけることに気をつけよ。
薄之為言、氷承其下。将自陥也。
これを薄(ぼ)にすれば言を為すも、氷その下に承く。まさに自ら陥らんとす。
この「薄」はおそらく「簿」(ぼ)のことで、「簿」は「帳簿」の「簿」ですが、古くは竹や木の札、すなわち木簡・竹簡のことです。「簿」を「薄」の字で表して、「氷」を縁語で使ったのでしょう。
これを札に書けば言葉になる。だが、その時には、その(薄い札の)下には氷が広がっている。自分自身が陥らないように気をつけよ。
有一於此、災必及身。可不戒哉。
ここに一も有らば、災い必ず身に及ぶ。戒めざるべけんや。
このどちらか一つでもあれば、災禍がお前の身にやってくる。気をつけねばならぬぞ。
と、親父が言っていたのですが、この「それ」とは何でしょうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・
清・鈕琇「觚賸」続篇巻一より。この文章の題名は「字訓」です。「文字についての教え」。文字を操る者、立法者、司法官、行政官、マスメディアのみなさん、その他もろもろの知識人を目指す息子への訓戒でした。文字の力はあまりにも強いので、その災禍を他人に及ぼした後、自分自身に返ってくる・・・かも知れませんよ。知らんけど。
コメントを残す