5月10日 賢者は自分を客観的に見ることができる

至河心死(河に至れば心死す)(「籜廊琑記」)

途中で中止する勇気が必要です。

怨霊に勝てるか。

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清のころのお話です。

晋州令をされた章燮どのに聴いたことだが、

表兄某孝廉意欲買妾、而妻不允。

「孝廉」は漢の時代に出来た制度で、孝行者で清廉潔白だとして地方から中央政府に推薦された人を言いましたが、明や清の時代には、科挙の地方試験を合格した「挙人」のことです。

妾? 買いたいなら買えばいいではないか。女房が反対する? がつーん、とやってやればいいだろう、がははは・・・とみなさん、思いますよね?

ところが、

其妻妬而悍、威振閫外。雖戚友輩以計勧之、百折不回、誓死不渝。

「閫」(こん)は屋敷の中の女性たちの部屋。「奥」とでも訳せるかも知れません。

これではどうしようもない。某は諦めた。

適妻病、延医調治。

このとき、医者が調剤した薬を、某孝廉が預かって、何やら別の粉末を混ぜたりしていたのだそうである・・・。

妻、服薬而死。

親類の中には医者を訴えるかという議論もあったようだが、某は見舞金を受け取って和解し、

遂伸其志。

さて、この年は、中央での試験があり、挙人として資格のある某も受験のために北京に向かうこととした。

諸同人計偕北上、孝廉輿馳駅往。

すると、

途中、妻形屢現。諸同人亦共睹之。

やがて黄河の渡し場である鄭州まで着くと、

諸同人相与沮曰、明日将渡河矣。尊閫生為悍婦、死為厲鬼、屢現形魄。

おまえさんの何を怨んでいるのかは別として、

如是、勢必不甘心於爾、爾不可以渡河。如渡河、某等亦不願与爾同舟共済。

奥さんに、一緒に引きずり込まれてしまうだろうからな」

と。

「なにを言うのだ!」

孝廉尤不服。

だが、翌朝、

将臨河埠、猛見其妻已早在舟中。

「あわわ」

孝廉怍而返、遂不渡河。

諸同人謂曰、諺所謂不到黄河心不死、今始信之。

と。

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清・王守毅「籜廊琑記」巻六より。女房なんか何がコワいもんか、びびって黄河を渡れないとは情けない。みなさんもそう思いますよね。さあ、勇気を出して黄河を渡りましょう! あれ? 誰もついてきてない・・・?

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