不成霖雨(霖雨を成さず)(「蓬窗日録」)
残暑というには暑すぎる。

おいらが悪いことにされてる?
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北宋の末ごろ、新法党の領袖として一時重きを為した章惇、字・子厚さまが、
罷相過南山寺。
相を罷めて南山寺を過ぐ。
宰相を引退したあと、郷里に戻る途中で、福建・漳州の名刹・南山寺に立ち寄った。
章惇の出身地に近いところです。
暑いころであった。
子厚不為礼、倚欄看雲。
子厚、礼を為さず、欄に倚りて雲を看る。
章子厚は、周囲に敬意を払わず、楼の欄干に寄りかかって、雲を見ていた。
そして、かたわらに侍していた僧に向かって無造作に言った。
夏雲多奇峯、真善比類。
夏雲に奇峯多く、真に善の比類なり。
「夏の雲(積乱雲)は、すごい形の山ばかりだ。・・・本当に、正義派グループの面々のように立派ではないか」
自分たち新法党のことを言っているのでしょう。
「まったくですなあ」
僧は、とぼけた顔で答えた。
「そうそう、夏の雲については、
曾有一詩甚奇。
かつて一詩有り、甚だ奇なり。
こんな詩を聞いたことがありますよ。なかなかすごい歌です」
僧は朗々と歌い出した。
如峯如火復如綿、飛過微陰落檻前。
大地山河乾欲死、不成霖雨漫遮天。
峯の如く火の如くまた綿の如く、
飛び過ぎて微陰、檻前に落つ。
大地山河乾きて死なんと欲するに、
霖雨を成さず、漫(みだり)に天を遮るのみ。
嶺のようだ、炎のようだ、はたまた綿のようだ、
飛び過ぎて行くとき、少しの間、日影が欄干の前に落ちる。
大地も山も河も乾ききって(もちろん人も水田も)死んでしまいそうな日照りの夏、
まともな雨を降らせることもなく、ただお天道様とおれたちを隔てているだけじゃないか。
という詩であった。
章惇はコワい顔をして言った、
有譏意。
譏意有りや。
「批判しておるのか?」
僧は澄まして言った、
「いや、全然」
子厚黙然。
子厚黙然たり。
章惇は顔を背けて黙りこくってしまった。
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明・陳全之「蓬窗日録」巻二より。新法党は悪いやつ多いですからね。まるで〇〇〇みたいにお天道様とおれたちを隔てているのだ。でも目の前で謗ってはいけません。やられるかも知れませんので。