以水試之(水を以てこれを試みよ)(「酉陽雑俎」)
毎日暑いですね。沖縄では台風みたいですが、関東はにわか雨もありません。

夏場は無責任体質で居眠りでメー
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唐の時代のことです。
白某という武官がいて、いつも長安の曲江でウマを洗っていた。
ある日、
馬忽跳出驚走。前足有物、色白如衣帯、縈繞数匝。
馬たちまち跳出して驚き走る。前足に物有りて、色白く衣帯の如く、縈繞すること数匝なり。
ウマが突然水の中から飛び出して、驚いたように走り回った。前足に何か、白く、衣の帯のようなものが何重かに纏わりついている。
「なんとかしてやれ」「へえ」
遽令解之、血流数升。
遽かにこれを解かしむるに、血流数升なり。
大急ぎで部下を動員してこの帯のようなものを解きほぐさせたが、その間にウマはケガをしたらしく、数升の血を流していた。
白将軍は不思議に思い、
遂封紙帖中、蔵衣箱内。
遂に紙帖中に封じて、衣箱の内に蔵す。
その白いものを、紙の間に挟み込んで、衣装箱の中にしまい込んだ。
その後、長安城内の水辺のあずまやで送別会があったとき、白は家からその箱を持って来て、珍しいものだと言って、
出示諸客。
出だして諸客に示す。
箱から出してお客たちに見せた。
ある客が言った、
蓋以水試之。
なんぞ水を以てこれを試みざる。
「おいおい、どうして、水に浸けてどうなるか試してみないのかね」
何が起こるかわからないが、とりあえず何か言ってみよう、というほんと無責任体質ですね。しかし無責任なコトバは賛同されやすいものでもあります。
そうだそうだということになって、白らはムチを使って穴を掘り、その中にその白いモノを置いた。
沃盥其上。
その上に沃盥す。
その上から、たらいの水をかけてみた。
少頃、蠕蠕如長、竅中泉湧、倐忽自盤若一席、有黒気如香烟、径出檐外。
少頃にして蠕蠕と長ずるが如く、竅中に泉湧き、倐忽として自ずから盤の一席のごとく、黒気の香烟の如き有りて、檐外に径出せり。
しばらくすると、白い帯はだんだんと大きくなってきたみたいで、堀った穴は中から水が湧きだし、たちまちのうちに蒲団一枚ぐらいの巨大なお皿のようになり、そこからお香の烟のような黒い気が出て、あずまやの軒から外に出て行った。
「あわわわ」「な、なんだ」「こ、これもしかして」
こうなってから、
衆懼曰、必龍也。
衆、懼れて曰く、「必ずや龍なり」と。
みんな恐れおののいて言った、「こ、これ、・・・・
龍だぞ!」
「うわーーーーーー!」
急帰、未数里、風雨忽至、大震数声。
急帰せんとしていまだ数里ならざるに、風雨忽ち至り、大震数声あり。
大急ぎで長安の町に逃げ帰ろうとして走り出し、まだ一キロも来ないうちに激しい風と雨が襲いはじめ、落雷の大きな音が数回聞こえた。
ふりかえると、先ほどまでいた川べりのあずまやは、もう跡形も無くなっていた。
・・・という。
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唐・段成式「酉陽雑俎」巻十五より。こんなふうに、どかんと来て、何もかもぶっ壊してもらいたい!・・・もんですよね。無責任体質的には。守るべきものがあるなら、知らんけど。七月も終わるので、そろそろどかんと一発、ツキも変えてくれることでしょう。お願い。