急救乃蘇(急救すなわち蘇る)(「茶余客話」)
わんこはエライ!でわん。

さいごーの付き合いもしてやるでワン。
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暑いですね。暑い時は冬の話でもして涼しくなりましょう。
殿撰の官にあった陳定先さま、
冬日偕其妾寝、室内別無一人、家人咸就寝。
冬日その妾とともに寝、室内別に一人も無く、家人みな就寝す。
冬のある日、妾とともに寝た。部屋には他には人もおらず、家中の者たちもぐっすり寝ていた。
夜半―――
家畜一巨犬、忽咆哮万状。
家に一巨犬を畜うに、たちまち咆哮して万状なり。
この家ではでかいイヌを飼っていたが、このイヌが突然激しく吼えはじめ、一万回も鳴くほどであった。
「なにごとかのう」
家人起、犬向主人窗外爬沙跳擲、窗紙尽砕。
家人起くるに、犬、主人の窗外に向かいて沙を爬して跳擲し、窗紙ことごとく砕く。
下男が起き出してみてみると、イヌは、主人の陳の部屋の窗に向かって、砂を掻いて飛び跳ねるようにぶつけて、窗に張った障子紙に全部穴が開いてしまう始末だ。
「ま、まさか」
急請主人不応、毀門入、則与妾併頭死。
急に主人に請うも応じず、門を毀ちて入るに、すなわち妾と頭を併せて死せり。
急いで主人を呼び出したが答えが無く、入り口を壊して入ってみたところ、陳と妾は頭を並べて死んでいた。
「おお、死んでおられる!」
急救乃蘇。
急に救うにすなわち蘇る。
大急ぎで手当てをしたら、なんとか生き返った。
よかったですね。
京師火坑焼石炭、往往燻人中毒、多至死者。
京師の火坑、石炭を焼き、往往人を燻して毒に中り、死に至る者多し。
北京では部屋の暖炉で石炭を燃やすが、これがよく人を燻して中毒させ、死んでしまう者が多いのである。
北人秋後即喜臥坑。馮大木舎人于九月十六日中煤毒死、亦異矣。
北人、秋後に即ち坑に臥するを喜ぶ。馮大木舎人の九月十六日に煤毒に中りて死するはまた異なり。
華北以北の出身者は、秋が終わると暖炉(オンドル)に寝るのを楽しみにしている。ただ、舎人の馮大木が、九月十六日(現在だと十月の下旬ぐらいでしょうか)に煙で中毒死したのは、さすがに常識外れであった。
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清・阮癸生「茶余客話」巻九より。一酸化炭素中毒なのは明らかですが、陳定先はワンコのおかげと急に救ってもらったので助かりました。普通は急に救っても蘇りませんので、熱中症や水の事故にも気をつけてくだされ。医療崩壊で救急車来なくなるかもだし。