吏道日遠(吏道日に遠し)(「袁中郎尺牘」)
ゴールデンウィーク終わってしまいました。もうシゴトに戻るのか・・・。別に楽しいことがあったわけでもないのですが、終わった後が楽しいわけでもないので、がっかりです。

水牛車でゆっくり戻ってくるかモー
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・・・無錫県令の趙さんに手紙を送ります。
弟看花西湖、訪道天目、往返呉越之間四閲月。
弟、花を西湖に看、道を天目に訪い、呉越の間を往返すること四閲月せり。
「弟」は謙譲した自称。ほんとうの弟ではありません。
わたくし、西湖のほとりで花を見ました。それから天目山を訪ねてきました。いにしえの呉越の国、江蘇のあたりをあちらへこちらへと行楽して、もう四か月になります。
足之所踏、幾千余里、目之所見、幾百余山。其他登覧贈寄之作、亦幾成帙。
足の踏むところ、幾千余里、目の見るところ、幾百余山ならん。其の他、登覧して贈寄するの作、また幾ばく成帙せしや。
この足で行ってみたところは何千シナ里になりましょうか。この目で見た山は何百いくつになりましょうか。また、登って観覧して感動して作って人に贈った詩、人からもらった詩、これをまとめた詩集がもう何冊できましたでしょうか。
―――いい生活ではありませんか。
ほんとにまったく、
丘壑日近、吏道日遠。
丘壑日に近く、吏道日に遠し。
山や丘での暮らしが日々に近しくなってくる一方、役人としての仕事生活は日々に遠いものに感じてまいります。
―――なんと! この人、サラリーマンしながらこんな生活をしていたとは。無責任社員顔負けだったのです。
弟之心近狂矣。聊述其顛末、以博尊兄一笑。
弟の心、狂に近いかな。いささかその顛末を述べて、以て尊兄の一笑を博さん。
わたしの心はもう狂ってきているんですよー。少々最近の動向をお話して、あなたさま(「尊兄」)に一笑いしてもらおうかと思います。
―――ここで話してみればいいではありませんか。
いやいや。
賤眷居錫城久、似為部下人。即欲移家之瓜歩、仙舟乞借一行。
賤眷、錫城に居ること久しく、部下の人となるが似(ごと)し。即ち家を移して瓜歩に之かんと欲し、仙舟の一行を借りんことを乞う。
あなたさまの賤しい仲間のわたくし、無錫の町にもう長いことおり、まるで居候みたいにお世話になってしまっております。ただちに、南京の瓜歩の町に棲み処を移してしまおうと思う・・・ので、どうぞ仙人のようなあなたさまの乗る舟に、乗せていただくわけないはいきませんか。(お話はその舟の中でいたしたいと思います。)
と、タダ乗りしようというお願いだったのです!
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明・袁宏道「中郎尺牘」より「与趙無錫書」。結果がどうなったかは書いてありませんが、相手は無責任シリーズです。頼まれて断るわけにもいかなかったのではないでしょうか。
わたしどももゴールデンウィークが終わってしまい、シゴトに戻ろうと思うのですが、なかなかできません。自分で戻れるはずがないので、そちらの舟で連れて行ってもらわないかぎりはなあ。