百療不差(百療するも差(い)えず)(「宋稗類鈔」)
強いて病名をつければ「睡眠障害」だと思いますが、今日も眠い。座ったまま何度も寝ます。その都度、睡眠時無呼吸症候群だから「ぶうすか」とイビキをかいてしまいます。

春眠だけで済むなら人生の四分の三ぐらいは有効に使える。
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北宋の王曙というひと、宰相の寇準の女婿であり、自らも有能な官僚であったが、
苦淋、百療不差。
淋に苦しみ、百療するも差(い)えず。
淋病に苦しんでおり、いろんな療法を試してみたが、治らなかった。
ところが、
自為枢密副使、疾頓除、及罷而疾復作。
枢密副使と為りてより、疾頓に除し、罷むるに及びて疾また作(おこ)る。
軍事の最高機関である枢密院の副長官に任命されると、病気は突然治ってしまった。しかし、その職を辞めると、また病気が再発したのでった。
あるひとが戯れて落書した。
欲治淋疾、唯用一味枢密副使。仍須常服、始得不発。
淋疾を治さんと欲すれば、ただ用いよ、一味の「枢密副使」。須らく常復するに仍(よ)りて、始めて発せざるを得。
「淋病を治療せんとする者は、純粋の「枢密副使」を服用せよ。ただし、必ず服用し続けること。常に服用することにより、発症を抑えることができる。」
と。
如何にも薬の用法のように書いた。
王曙は、「枢密副使」が薬だったのではなくて、
「わしは重要な仕事で緊張感を持っている間は発症しなかったのだ」
と言い張った。いくらでも劇務は可能である、と。確かに、現代でも緊張して仕事してるといい仕事をする人もいる・・・かも知れません。
後、
拝同中書門下平章事、逾月卒。
同中書門下平章事を拝し、逾月にして卒す。
「同中書門下平章事」(「どうちゅうしょもんかびんしょうじ」と読みます。)は、唐代に行政府の中心であった中書省と詔勅を起案する権限を持った門下省の両方の仕事の責任者、すなわち宰相と同格にする、という辞令で、宋代にはこれが宰相の職名になりました。
王曙は、
宰相に任命されたが、一か月ちょっとで死んでしまった。
やはり「枢密副使」しか効かなかったのである。
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清・潘永因編「宋稗類鈔」巻二より。「躁競」篇に取り上げられています。この篇は、「躁(さわ)がしく競った」、出世のために大騒ぎした人たちの逸話を集めたもの。みなさんにも参考になるかと思って紹介してみました・・・が、「淋病は経験がないので参考にならない」という人もいるかと思いますので、次回は痛風の人にしましょう。

こんなことになるから、はじめから服なんか持たずに正直に暮らせばいいんじゃよ♬