三人朋比(三人朋比なり)(「嘯亭雑録」)
次のドウブツから、あなたに似ているものを選んでください。
①コウモリ ② トラ ③ オオカミ ④ ネズミ ⑤ キクイムシ
今日ふと「ドウブツ占い」を思い出したんですが、それとはまた違う。

おれたちアリーが一番有能でアリー。
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19世紀の半ば、清王朝も衰えが目立ったころ、湖北で流行る歌がありました。
畢不管、福死要、陳倒包。
畢は管せず、福は死を要め、陳は包を倒す。
畢は知らん顔、福は死なせるよ、陳は財布をひっくり返す。
これはなんじゃ。
これは、この時の湖北の「三奸」(三悪代官)を歌ったものなのです。
畢公任制府時、満洲王公福寧為巡撫、陳望之為布政。三人朋比為奸。
畢公制府に任ぜられるの時、満洲王侯・福寧巡撫となり、陳望之、布政たり。三人朋比して奸を為す。
畢公が府知事に任命された時、満洲族の王族・愛新覚羅福寧が軍政を統べ、陳望之は広域行政官で、三人は仲良しの悪代官であった。
この三人、それぞれにキャラが立っていた。
畢性迂緩、不以公事為務。
福天資陰刻、広納苞苴。
陳則摘人瑕疵、務使下属傾嚢解槖以贈、然後得免除。
畢は性、迂緩、公事を以て務と為さず。
福は天資陰刻、広く苞苴を納む。
陳はすなわち人の瑕疵を摘み、下属をして嚢を傾け槖を解きて贈らせしめ、然る後に免除を得たり。
「苞苴」は、ワラ包み(苞)とワラの敷物・風呂敷(苴)で、風呂敷から包みを出す、すなわち贈り物をすること。
畢の性格はのんびりしてて緩く、公共のことはシゴトだと思っていない。
福は天からもらった性質が、陰惨で酷薄、ずいぶん賄賂をもらっているらしい。
陳は人の悪事や失態を騒ぎ立て、部下に捕らえさせて、財布を逆さにしポシェットをばらばらにして(身ぐるみ剥いで)から釈放した。
それでこんなことも言われた。
畢如蝙蝠、身不動揺、惟吸所過蟲蟻。
福如虎狼、雖人不免。
陳如鼠蠧、鑚穴触物、人不知之。
畢は蝙蝠の如く、身は動揺せざるに、これ過ぐるところの蟲蟻を吸う。
福は虎狼の如く、人といえども免れず。
陳は鼠蠧の如く、穴を鑚りて物に触るるも人これを知らず。
畢はコウモリみたいなやつ。ぶらさがって動きもしないで、近くのムシやアリを吸い込んでしまう。
福はトラ・オオカミみたいなやつ。どんな人もその悪政から逃れられない。
陳はネズミ・キクイムシのたぐい。人に気づかれないように、穴を空けて蔵の中のものを盗んでいく。
故激成教匪之変、良有以也。
故に教匪の変を激成せしむるも、まことに以てする有るかな。
こんなだから、太平天国の乱を激化させたと言われる。まったくその理由もわかろうというものだ。
その後、
畢公死後、籍没其産。陳為初頤園所劾罷。惟福寧尚列士版、人皆恨之。
畢公は死後、その産を籍没す。陳は初頤園の劾するところとなる。福寧のみなお士版に列し、人みなこれを恨む。
畢公は死んだ後、家の財産はすべて没収された。陳は初頤園子の弾劾をくらって引退した。ただ、福寧のみは、今もなお読書人の名前一覧に掲載されている。ひとびとはみな、このことに腹を立てているとのこと。
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清・愛新覚羅昭連「嘯亭雑録」巻十より。仲良しとはいえ、こんなのばかり任命していたら、任命責任者出て来い、と言われますよ。人間ではなくドウブツを任命していたみたいなものだからいいことにするか。