鳥嚶嚶兮(鳥、嚶嚶たり)(「後漢書」)
肝冷斎はどこに行っているのか、はさておき、本日は、昨日出て来た梁鴻の友だちのお話です。

(あか)おれたちは友だちだ、おにぎりも分けて食べるぜ。(あお)そうでちたか。にやにや。
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鴻友人京兆高恢、少好老子、隠於華陰山中。
鴻の友人、京兆の高恢は、少くして老子を好み、華陰山中に隠る。
梁鴻の友人の長安近郊のひと高恢は、若いころに「老子」の書にはまってしまい、長安の南にある華陰山地に隠棲した。
さて、
鴻東游思恢。
鴻、東游せんとして恢を思う。
梁鴻は扶風から東の方へ旅立つ時、恢のことを思った。
そこで、詩を作った。
鳥嚶嚶兮友之期。念高子兮僕懐思。想念恢兮爰集玆。
鳥嚶嚶たるは友の期ならん。高子を念(おも)いて僕、懐思す。恢を想念するに、ここにこれ集まれり。
鳥が「あー、あー」と鳴くのは友との約束の時期だからだろう。
あの高のやつのことを思い出して、おれは心がじーんとする。
あの恢のやつのことを思い出すと、いまここで会っているかのようだ。
しかしながら、
二人遂不復相見。
二人ついにまた相見ざるなり。
二人はとうとう二度と会うことはなかった。
恢亦高抗、終身不仕。
恢もまた高抗し、終身仕えず。
高恢という人も(梁鴻同様)高潔で反抗心の強い人であったので、彼は一生涯、人に仕えることが無かった。
そうです。
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「後漢書」巻八十三・逸民列伝より。ところで、鳥が「あーあー」と鳴くとなぜ友と約束したときのことになるのか。これは眠くてもガマンして「詩経」を読んでみるとわかります。
「小雅・伐木」にいう、
伐木丁丁、鳥鳴嚶嚶。出自幽谷、遷于喬木。
木を伐(き)るに丁丁、鳥の鳴くや嚶嚶。幽谷より出でて、喬木に遷る。
木を伐る音は「とん、とん」。鳥の鳴く声は「あー、あー」。
奥深い谷の森から出てきて、一本高い木の枝に飛び移った。
嚶其鳴矣、求其友声。相彼鳥矣、猶求友声。
嚶としてその鳴くや、その友を求むるの声なり。彼の鳥を相(み)るに、なお友を求むるの声あり。
「あー」と鳥が鳴くのは、その友を求める声なのだ。
あの鳥のすがたを見てみろ、やつもまた友を求めているのだ。
矧伊人矣、不求友生。神之聴之、終和且平。
いわんや伊(こ)の人、友生を求めざらんや。これを神としこれを聴き、ついに和かつ平ならん。
それなのに、おれたち人間が、友だちを求めないでいていいのか。
友を求める声を神秘的なものとして聴き、やがては和らぎ平穏になろう。
これは周王朝の大会に遠くからやってきてくれた諸侯をねぎらうための歌だった、のだと思われます。