赤体游行(赤体にて游行す)(「栖霞閣野乗」)
普通つかまりますよね。

みんな、わしのウワサしているのかな。
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清の終りごろ、浙江・平湖の町あたりにいた魯癲子(ろ・てんし、「おかしな魯さん」)は、名前も字も出身地もわからないのだが、
盛夏或衣綿絮、雪中則赤体游行、嬉笑自得。
盛夏にあるいは綿絮を衣(き)、雪中にすなわち赤体にて游行し、嬉笑自得す。
夏の真っ盛りに、わたで出来た着物を着ていた。かと思うと、雪の中を全裸で乞食して歩いていた。いつも何がうれしいのか、一人で勝手に笑っていた。
あるときは、
遇人家索酒飲、数斗不酔、自言当在雲間脱殻。
たまたま人家に酒を索めて飲み、数斗も酔わず、自ら言う、「まさに雲間に在りて殻を脱すべし」と。
偶然通りかかった家に入って行って、酒を求めて飲みはじめ、数10リットル飲んでも酔わない。自分で言うには、「雲の間で肉体から脱出する予定でしてな」と。
清代の一斗は10リットル強です。
酔わないなら飲まなければいいのに、と思ったのですが、ついで少し南の松江府(現在の上海市内)に現れて、
遇知府出、作酔顛状、大呼斥其名。
知府の出づるに遇い、酔顛状を作して、大いに呼びてその名を斥く。
府知事が外出する行列に行き合わせると、酔っぱらった状態になって、大声で知府の本名を叫んで、悪口を言った。
と、お酒を飲んでいないときに酔っぱらうということができた。
知府が馬上から不愉快そうに睨むと、さらに
曰、当不良死。
曰く、まさに良死せざるべし。
「おまえさんは、まともな死に方はしないぞ」と叫んだ。
「怪しからん」
知府はさすがに怒って、魯を捕らえさせ、
杖之、立斃。
これを杖するに、立ちどころに斃る。
部下に命じて杖で叩かせたところ、あっという間に死んでしまった。
ところが、それから二年後、
有人見之呉閶門。
人のこれを呉の閶門に見る有り。
蘇州の大門の近くで死んだはずの彼を見かけた者があった。
魯はそのとき、「酔歌」という歌をうたって、乞食していた。
擲杖下丹丘、寒花点石楼。十年残酔里、不見海山秋。
杖を擲ち丹丘を下り、寒花、石楼に点ず。十年酔里に残して、海山の秋を見ず。
杖を放り出して、仙人たちの棲む丹丘を降りてきた。
冬にも花が石の建物に咲いている。(あり得ないことの喩え?)
十年の間、酔っ払い村でみじめな目にあって、
海や山の秋のすがたを目にせなんだよ。
マジメに理解できる歌でも無かったが、さて、その後は、魯癲子の噂は絶えて聞かない。(結局、府知事がどういう死に方をしたか、この本の中ではわかりません。残念!)
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清・孫静安「栖霞閣野乗」上より。こういう人いたらみなさんはどうしますか。やっぱり通報しますか。