釣巨鼈客(巨鼈を釣るの客)(「何氏語林」)
すっぽん美味いですかね。

カメ食うな、でカメ。
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九世紀、中唐のころのことですが、宰相の地位を追われて、淮南に左遷されてきたばかりの淮南節度使・李紳のもとに、長安の友人の紹介状を携えて、張祜という男が訪ねてきた。
自称釣巨鼈客。
自ら「巨鼈を釣るの客」と称す。
「巨大すっぽんを釣り上げる旅人」と自称していた。
「なんだと!」
李盛怒因詰之。
李、盛んに怒り、因りてこれを詰(なじ)る。
李は怒りっぽいので有名であったから、怒り調子で詰問した。
以何為竿。
何を以て竿と為す。
「何を竿にして釣り上げるのだ!」
以虹為竿。
虹を以て竿と為す。
「空にかかる虹を竿にしますぞ」
以何為鉤。
何を以て鉤と為す。
「何を釣り針にして釣り上げるのだ!」
以月為鉤。
月を以て鉤と為す。
「空にかかる月を釣り針にしますぞ」
以何為餌。
何を以て餌と為す。
「それでは、何をエサにして釣り上げるのだ!」
以短李相為餌。
短なる李相を以て餌と為さん。
「チビの李大臣を、エサにいたしましょう・・・か」
激怒した!
かと思いましたが、
李黙然、厚贈之。
李黙然として、厚くこれに贈る。
李は黙ってうなづくと、たいへんな量の下賜品を与えて引き取らせた。
んだそうです。
暗黙のうちに、
(そうか。虹で、月で、わしか。それで何かでかいものを釣り上げられそうか)
(それほどの気宇の方と聞いておりますぞ)
と心の会話をしていたのでしょう・・・ね。
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明・何良俊「何氏語林」巻二十六「簡傲篇」より。「地位も無いのにえらそうにしたやつシリーズ」です。10年ぐらい前の肝冷齋でもご紹介しているはずで、地位もないのにえらそうにした張祜をほめている文章なのですが、大人になった今読み直すと、相手をみてやっている(李紳はプライドは高いですが、「牛李の党争」の「李」徳祐の方の有力者として政治改革に関わり、詩人としても名高い名士)んだろうな、と思うようになりました。失敗するとほんとにクビ切られたりしますので、みなさんは止めておいた方がいい・・・と思いますよ。うっしっし。
これはほんとにほめてもらってるのかな?実態は好きで見ているのではなくノルマに苦しんでいるだけなのですが・・・。