猶嵩山於五岳(嵩山の五岳に於けるがごとし)(「先哲叢談」)
感謝しようと思っても、毎日寒くてイヤになりますね。

暖かくなるったら、裸の王さまのようにみんなに感謝して生きていこう。
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江戸時代の中頃のことでございますが、
書商小林新兵衛、請徂徠曰、小子無家号、願先生命焉。
書商・小林新兵衛、徂徠に請いて曰く、「小子、家号無し、願わくば先生の命ぜんことを」と。
書籍商の小林新兵衛が、ある時、荻生徂徠先生にお願いした。
「うちの書店にはまだ会社名が無いんですわ。できれば先生にお名づけいただきたいものでございますが」
徂徠先生は、笑って言った、
書賈出入吾門者五人、而爾所鬻価最高。
書賈の吾が門に出入する者五人、しかして爾の鬻(ひさ)ぐところの価、最も高し。
「うちの学校に出入りする本屋は五人いるが、その中で、おまえさんが売りに来る本の値段が一番高い」
カネほど大切なものはない。生産者を苦しめてでも安く売れ、いまだけ、かねだけ、自分だけがよければいいのだぞ! と、わたしなどは自由主義なので思うのですが、先生は言った、
猶嵩山於五岳、宜名嵩山房。
嵩山の五岳におけるがごとければ、宜しく「嵩山房」と名づくべし。
「五岳の中での嵩山のようなものだからなあ・・・、「書店・嵩山房」という名前がよかろう」
チャイナで古代から伝わる「五岳」は、
東岳・泰山
西岳・崋山
南岳・衡山
北岳・恒山
中岳・嵩山
ですが、その中で嵩山が一番高い(ことになっている)。それにあやかって「嵩山房」じゃ。わはははは。
「へへー」
その名のとおり、やがて嵩山房は江戸随一の書籍店と認められ、大いに良書を出版したのでございました。いい名前をつけていただいて、感謝、感謝、感謝でございます。
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本朝・原念齋「先哲叢談」巻六より。今日は「サンキューの日」。みなさん感謝しましょう。ありがとう。ありがとう。ありがとう。
ところで、現代のすぐれた技術で調べると、五岳の最高峰の標高は、
東岳・泰山 1,545メートル(玉皇峰)
西岳・崋山 2,154メートル(南峰)
南岳・衡山 1,300メートル(祝融峰)
北岳・恒山 2,017メートル
中岳・嵩山 1,440メートル(少室山)
なんだそうです。これを見ると、嵩山は下から二番目、あまり高くなかった。このような誤った知識で企業名を付けるとは、怪しからん。コンサルティング失敗では。明日は平日だとは、怪しからん。ああ、怪しからん。税金も。