3月7日 また寒くなってきましたもうはふはふだ

道人不見(道人見えず)(「東軒述異記」)

こういう人は、なかなか見えないです。見えるようになるともうそろそろ近いかも・・・。

五平餅でも食って、これからのことを考えまるかな。五平餅も、熱いときは「はふはふ」になります。

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清のはじめごろのことでございます。

洞庭湖の東では、席・翁・呉・許という四つの一族が富豪とされていたが、このうち許の一族は没落してしまっていた。落ちぶれた許家に、許七老官(許氏の同じ世代で七番目の男子で、高齢のおじさん)という人がいて、

家貧而患瘵、骨立声嘶、命在旦夕。

末期症状だからといって医者に見せるカネがあるわけではない。許七は、既に死を覚って、その日の夕方、杖をついて家の外に出て、家の周りなどをゆっくりと見て歩いていた。

しばらくすると、突然ひょろひょろと家の中に入ってきて、

覓太平銭。

と老夫人に言った。

「うちにそんなお金ありますかいな・・・」

「はあはあ、はふはふ、そ、そうかのう・・・」

不可得、遂携米升余出施。

「お、おまえさん、そのコメは今晩の一家分だよ」

とばばあが追いかけようとしたが、その前に許七はがっかりしたように帰ってきた。

「どうしたんだね」

「はふはふ、じ、実はのう・・・」

先ほどじじいは家の外で、

忽遇黄胖道人。視之曰、子病篤矣。我化爾太平銭三文、予薬三丸。可供在香火堂内、作三次服之、有救也。

「はあはあ、はふはふ、お、お願いじゃ・・・」

と頼むと、道人は(みなさん混乱してはいけませんよ)、三つの丸薬をくれた。

許受其薬、入覓太平銭。

太平銭が無かったのに、探しに行く前に「丸薬」をくれているのです。言ってることと違っているようですが、あんまり登場人物誰も気にしていません。

しかし、銭の代わりのコメを持って家の外に出てみると、もう

道人不見矣。

のだそうだ。

是夜病甚。其妻聞道人之言、試取薬進之。

すると、はてさて、

一服而熱寐。

「寐」は「寝」と同じで「寝る」。「休息、終息する」。

再服而霍然。

三服而声朗体強、壮健異常。

その後、許七は、

逮十余年而没。康煕十五年春。

生活も少しは楽になったが、どういうわけか何かで儲けがあるたび、そのうちの三分(3パーセント)は必ず損金になってしまったという。

よかった・・・かどうか、許七がすごいパワハラじじいでみんなが困ってたかも知れませんので、禍福はあざなえる縄のごとし、まあすべて前世の御縁だと思って何事も受け入れることが必要ですじゃ。
それにしても、こういうことがほんとにあったというのですから、昔の人はすごいなあ。

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清・東軒主人「東軒述異記」巻下より。会社の階段、地下鉄の階段、家の前の坂道、少し歩くと「はあはあ、はふはふ」と息が切れます。今もじっとしてるのに「はふはふ」だ。興奮しているみたいに見えますね。これで今晩、明日の寒さを乗り切れるのだろうか。二軍に行かされるかも。
でも、不思議な道士が現れて薬くれるかも知れないから、心配してもしようがないですね。みなさんもこの不思議な道士に出会っているかも知れません。何かをもらっているかも知れません。気づいてないだけで。

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