菜有五美(菜に五美有り)(「夜航船」)
野菜だけ食べてればいいのか。

おろしがいいネ。
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三国の英雄・諸葛孔明は、
南征孟獲、濾水汹涌、不得渡。
孟獲を南征するに、濾水汹湧して渡るを得ず。
雲貴地方の大酋長・孟獲を討伐するため南征しようとしたが、濾水の流れが獰猛で激しく、渡ることができなかった。
地元民が言うには、
須殺人以頭祭之。
須らく殺人して頭を以てこれを祭れ。
「(川の神さまが怒っているのであるから、)とにかく人をコロして、頭を切って川の神に捧げなされ」
だが、孔明さまはおっしゃった。
吾仁義之師、奚忍殺人以代犠牲。
吾は仁義の師なり、奚(なん)ぞ人を殺して以て犠牲に代えん。
われらは仁義の軍隊じゃ。どうしてドウブツ犠牲でなく、人を殺して捧げものにすることができるだろうか、いや、できない。
そして、
于是用麺為皮、裹猪羊肉于内、象人頭而祭之。
是において、麺を用いて皮と為し、猪羊の肉を内に裹みて、人頭を象りて祭る。
この場面で、麺(小麦粉の練り物)を引き延ばして皮にして、中にブタやヒツジの肉を包んで、人間の頭のような形にして、川の神さまに捧げものとしたのだった。
後之有饅頭始此。
後の饅頭はここに始まる。
後世(現代でも)食べられる「まんじゅう」はここに起源があるのである。
だそうなんです。
また、
出軍、凡所止之処、必種蔓菁。即蘿蔔菜、蜀人呼為諸葛菜。
軍を出だすに、およそ止どまるところの処、必ず「蔓菁」(まんせい)を種(う)う。即ち、蘿蔔菜(らふくさい)にして、蜀人呼んで「諸葛菜」と為す。
軍を出動させるときには、いつも宿営するところには、必ず「蔓菁」を植えた。これは、一般に「蘿蔔」(らふく)と言われる野菜、すなわちダイコンのことである。四川のやつらは「諸葛菜」と読んだりもする。
其菜有五美。可以生食、一美。可菹、二美。根可充飢、三美。生食消痰止渇、四美。煮食之補人、五美。故又名五美菜。
其の菜に五美有り。以て生食すべきは一美なり。菹すべきは二美なり。根も飢に充てるべきは三美なり。生食するに痰を消し渇きを止むるは四美なり。これを煮て食らえば人を補するは五美なり。故にまた「五美菜」と名づく。
この野菜(ダイコン)には五つのすばらしいことがある。生のままでも食べられるのが一番目、塩漬けしても美味いのが二番目、根も食べることができるのが三番目、生で食べると痰が切れ、のどのかわきを癒すことができるのが四番目、煮て食べると腹持ちもよいのが五番目である。それで、「五つのすばらしいことのある野菜」ともいう。
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清・張岱「夜航船」巻十一「日用部」より。「饅頭」は宋・高丞「事物紀原」にも横山光輝「三国志」にも書いてあって有名な話ですが、孔明がダイコンも担いで移動していたのは、あんまり知らなかった、でしょう。こちらについては典拠は不明。
麺(炭水化物)で肉団子を包んだ饅頭は夜食うと苦しいです。夜は大根にしましょう。