3月08日 居眠りしないことはできない

無頭好大胆(無頭、好ろしく大胆)(「籜廊琑記」)

頭が無い人がいると、手足は勝手に出来るからいいかも知れませんが、やっぱり周りは困ります。

頭無いとオニにも笑われるぞ。

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明の半ばごろのことですが、許逵(きょ・き)という人が、受験勉強のために

読書一楼。

一楼に読書す。

とある二階建ての建物の二階を借りて書を読んで勉強していた。

夜が更けてまいりました。

夜既深、偶爾回顧。

夜既に深く、偶爾に回顧す。

もう深夜という頃、たまたま(何やら異様な気配を感じて)後ろを振り向いた。

すると、

見背立二鬼、頭大如箕。

背に二鬼の、頭大なること箕の如きの立てるを見る。

背後には、頭が「箕」(先の方の開いたざるみたいなもの)のようにでかい化け物が二匹、立っていたのが目に入った。

「ふん」

こういうところにはこういうものが出るものである。

許逵は平然として言った、

小鬼好大頭。

小鬼、よろしく大頭なり。

「ちっぽけな化け物のくせに、ずいぶん頭がでかいもんだな」

こういうのが出た時には、恐れてはいけない。強く出た方がよい。

すると、化け物は答えた、

無頭尚書好大胆。

無頭の尚書、よろしく大胆なり。

「頭の無い大臣さまのくせに、ずいぶん胆がすわっているもんだな」

「はあ?」

尚書(六部(省)の長官・大臣)とはずいぶんな誉め言葉のようだが、「無頭」って何やねん?

だが、二匹の化け物は、

「あははは」「いひひひ」と笑い声をあげながら、

倐不見。

倐(しゅく)として見えず。

ふっと見えなくなってしまった。

まだ楼内に笑い声だけがこだましていた、という。

後、許逵は科挙を経て山東・楽陵の知事になり、ここで県城の守備に功績があったとして、当時一番の危険地帯とされていた江西の按察司副使に転任したが、朱宸濠の乱に対処しきれず、乱軍の中で惨殺された。(この乱を鎮圧したのが、王陽明であります。)

国難に死んだということで礼部尚書(文部長官)の位を贈られたが、葬儀のために郷里に運ばれてきたその骸には首が無かった。

鬼已預知之矣。

鬼、すでにこれを預知せり。

化け物たちは、ずっと前にこのことを知っていたわけだ。

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清・王守毅「籜廊琑記」巻五より。今日はこれだけで、余韻を以ておしまい。長官や大臣が頭が無いと困りますね。具体的な誰かのことではありませんよ。

明日居眠りがしづらいんで、今日は早く寝たいんです。ああ、でも早く寝たり遅く起きたりしたところで、明日はまたどうあがいても居眠りしてしまうであろう、会議で恥を掻くであろう、周りの人が実は別に気にも留めていないのに、みんな嘲笑していると考えて落ち込むであろう、と預言しておくぞよ。

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