不費銭功徳(銭を費やさずして功徳す)(「勧善書」)
今日の情報は、お金を使わずに功徳を積む方法、です。これはためになるかも。

こんな貴重な情報を無料で提供とは。肝冷庵くんはたいへんな功徳になりますぞう。このひとも功徳を積んでるようですじゃな。
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清の時代のマニュアルです。今生か来世か、どちらかでいいことがあるカモ。ありがたいなあ。実は、「えらい役人がお金を使わずに功徳を積む方法」「商人がお金を使わずに功徳を積む方法」「読書人階級が・・・」「僧侶や道士が・・・」など十数種があって、これらは現代では通用しないかも知れません。また、「富貴の人がお金を使って功徳を積む方法」もあるのですが、我々には関係なさそうです。だが、
「婢僕工役不費銭功徳」
「下女、下僕、下働きたちがお金を使わずに功徳を積む方法」
というのがあって、これは、被雇用者として生きる我ら「勤め人」とか「社畜」といわれる者にぴったりです。これを無料で紹介しようというのだから、これは、なんでも「無料」が大好きなみなさんには好評なことでしょう。
以下のようにすると功徳が積めるようです。
〇小心勤謹。
小心にして勤謹す。
びくびくしながらマジメに仕事しろ。
なるほど。
〇潔浄飯肴。
飯肴を潔浄せよ。
食事がらみは清潔にしておけ。
〇不搬弄是非、致主人骨肉不和。
「搬弄」は「人の欠点を挙げてからかうこと」です。
是非を搬弄して主人の骨肉を不和に致さず。
いいとかわるいとかその人の欠点をからかって、えらい人たちを仲たがいさせないように。
うっしっし。お任せくだされ。
〇不伝説主人隠事。
主人の隠事を伝説せず。
おえら方の隠し事を言い触らすな。
〇不背主向客。
主に背きて客に向かわず。
上司を裏切って取引先に取り入るな。
〇不誤主委託。
主の委託を誤たず。
頼まれたことは確実にやれ。
これはできません。ムリなことを頼んでくる上司もいますからね。
〇不誣枉嚼舌。
誣枉して嚼舌せず。
話を曲げたり作ったりして、舌を噛むようなことのないように。
〇不抛棄溌散飲食。
飲食を抛棄溌散せず。
食べ物・飲み物を投げ捨てたりばらまいたりするな。
〇不糜費主人柴米物料。
主人の柴・米・物料を靡費せず。
会社(経営者)の燃料や食糧や物資を使いこんで減らすな。
「靡」(び)はここでは「へらす」と訓じます。
〇不霉爛主人衣服、損壊器皿。
主人の衣服を霉爛(ばいらん)し、器皿を損壊せず。
会社の衣料にカビを生やしたり、備品・調度品を壊してはいかん。
形あるものは壊れるものですが、なかなかそこをわかってもらえないかも。
〇不偸盗財物飲食。
財物・飲食を偸盗せず。
会社の物をちょろまかしたり、会社のカネで飲み食いするな。
〇不倚勢強買短価。
勢に倚りて強いて短価に買わず。
優越的地位を利用して、物を安く買いたたくな。
〇不因仇恨、激怒主人生事。
仇恨に因りて主人を激怒せしめて事を生ぜず。
上司に(仕事の中身ではなく)個人的な原因で激怒させて、困った事にならないように。
ほんとですよね。
〇不因打罵妄生呪詛。
打罵に因りて妄りに呪詛を生ぜず。
殴ったり怒鳴ったりが原因で、要らない恨みを買うな、持つな。
〇不因主貧懦玩侮慢。
主の貧懦に因りて侮慢を玩(もてあ)そばず。
上司や先輩がケチだとか気が弱いとか言って、あなどったりバカにしたりするな。
これは身につまされますね。被害者として。
〇不因衣食不敷、萌二心。
衣食の敷(あまね)かざるに因りて二心を萌さず。
着る物・食べる物が十分でないからといって、裏切ってはならない。
〇不同輩攙害。
同輩を攙害せず。
同僚たちを告げ口などで害さない。
〇不克落銭財。
銭財を克(よ)く落とさず。
会社の利益や資材を失敗して減らさない。
〇不欺哄幼主。
幼主を欺哄せず。
世襲の若社長を欺いたり嘲笑したりしない。
〇不奸計躱懶。
奸計して躱懶(たらい)せず。
ごまかして逃げ回ったりサボったりしない。
〇不見利忘恩。
利を見て恩を忘れず。
利に覚って恩義を忘れるな。
以上でした。みなさんはどれぐらい功徳が積めてますか。
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清・熊弘備「宝善堂不費銭功徳例」(民国「身世准縄」所収)より。近人・袁嘯波の「民間勧善書」に載ってました。こんなのムリ、というのが多いです。無料で功徳が積める、というのですが、やはりタダほど高いものはない、のかも知れません。それでもみなさんタダが大好き。