禁天下喫煙(天下の喫煙を禁ず)(「郎潜紀聞」)
そういえば長いことタバコ吸ってないですね。なにかに化かされたときにはタバコを吸って一服するといい、ということですが・・・。

原発安全神話からは目が醒めたが、まだ平和ボケに化かされているかも。われわれは。
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清の聖祖・康熙帝は、
不飲酒、尤悪喫煙。
飲酒せず、尤も喫煙を悪む。
お酒は飲まないし、タバコを吸うのをたいへん嫌がった。
一方、当時、閣僚クラスに
両公酷嗜淡巴菰、不能釈手。
両公、淡巴菰を酷嗜し、手を釈(お)く能わず。
「淡巴菰」(たんばこ)は、タバコのことです。念のため。
お二人が、タバコが大好きで、手から放すこともできないぐらいであった。
いわゆるチェーンスモーカーだったのだ。
聖祖南巡、聞二公之嗜也、賜以水晶煙管。
聖祖南巡し、二公の嗜を聞くや、賜うに水晶煙管を以てせり。
康熙帝は江南に行幸なさった際、二人の大臣のお好きなものを知って、水晶でできたキセルをお土産に買ってきて御下賜くだされた。
両大臣、恐縮し感謝して、早速使ってみたところ、
偶呼吸、火焔上升、爆及唇際。
呼吸に偶して火焔上昇し、爆して唇際に及ぶ。
吸ったり吐いたりに対応して、透明なキセルの中を炎が上昇し、吸い口の唇のあたりまで燃え上がってくるのである。
外から見えるのでたいへん怖ろしい。
二公懼而不敢用。
二公懼れて敢えて用いず。
二大臣はこわがって、キセルを用いることを止めてしまった。
皇帝から頂いたキセルを使わずに、他の道具で喫煙することはできません。お二人はこれによってタバコを止めることができた。
そこで、皇帝は、
遂伝旨禁天下喫煙。
遂に伝旨して天下の喫煙を禁ず。
その結果に基づき、ひとびとに至るまで趣旨を伝えて、天下の喫煙を禁じたのである。
当時、蒋陳錫学士が詩を作った。
暚池宴罷雲屏蔽、不許人間煙火来。
瑶池は宴罷んで雲屏に蔽われ、人間(じんかん)に煙火の来たるを許さず。
「瑶池」(ようち)は、九個の太陽が水浴びをしているという仙界の池です。太陽は全部で十個あって、そのうち一個が地球を照らしている間に他の九個は天界で水浴びをしているという太古の伝説があります。
天上の玉ゆらぎの池での宴会がおわり、雲の屏風が太陽(炎)を隠したので、
人間世界には(太陽の発出する)けむりや炎が伝わって来ることがない。
この詩は、
即紀此事。
即ちこの事を紀するなり。
すなわちこの事件について記したものである。
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清・陳康祺「郎潜紀聞」二筆巻十五より。これで止められるならもっと早く止めている気もします。もう二十数年ガマンしているからそろそろ吸ってみようかな。何かに化かされていた頭がすっきりするかも。