吏不呼門(吏は門に呼ばず)(「魏武侯集」)
3000年ぐらい来てないので、そろそろ来るのかなあ。

年寄りも、大切にしよう。ですじゃ。
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対酒歌太平、時吏不呼門。
酒に対して太平を歌わん、時に吏は門に呼ばわらず。
酒を前にして、太平の歌を歌おう。
その時代には、役人どもは門前に来て税を納めろなどと怒鳴りはしない。
今は、怒鳴っているかも知れませんが。
太平の時代になれば、
王者賢且明、宰相股肱皆忠良、咸礼譲。
王者は賢かつ明、宰相股肱はみな忠良にして、みな礼譲あり。
王さまは賢くかつ明察、宰相や股肱の臣はみな忠義にして善良、みんな礼儀を守り謙譲しあう。
民無所争訟、三年耕有九年儲、倉穀満盈、班白不負戴。
民には争訟するところ無く、三年耕やせば九年の儲有り、倉穀は満盈し、班白は負戴せず。
「班白」(はんぱく)は髪の毛の半分が白い、中高年の人の謂い。
人民には争い訴えあうようなことは無く、三年耕やせば九年分の蓄えが出来、倉庫には穀物が満ち溢れ、白髪が半分あるような老人は、荷物を背負ったり頭に載せるような重労働はしない。
ハゲは同情されないのでしょう・・・か。
雨澤如此、百穀用成、却走馬以糞其土田。
雨澤かくの如く、百穀用って成り、走馬を却して以てその土田に糞(ふん)す。
「くそ」す、と読んではいけません。「糞」(ふん)は、本来、肥しを施すこと。我が国の昔の賢者が、施すものに「くそ」と訓じたわけです。
雨のような恵みはかくの如く降り、あらゆる穀物は成長するから、軍事や伝令に走り回る馬は不要になり、田の土に肥しをやるための家畜が必要となる。
臣下のものどもは、
爵公侯伯子男、咸愛其民、以黜陟幽明、子養有若父与兄。
爵は公・侯・伯・子・男、みなその民を愛し、幽と明を黜陟(ちゅっちょく)するを以て、子養すること父と兄のごとき有り。
(春秋にあるように)公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の五つの爵位を与えられ、それぞれその領民を愛し、幽暗な愚か者を黜(しりぞ)け、賢明な優秀なやつを陟(のぼ)らせて担当させ、(民を)父や兄が子どもを養うように大切にするのだ。
犯礼法、軽重随其刑、囹圄空虚、冬節不断人。
礼法を犯せば、軽重その刑に随い、囹圄(れいご)空虚して、冬節には人を断ぜず。
「囹圄」は牢。いにしえは冬は空気が厳しい季節なので、厳しい刑罰を行うとさらに気候が厳しくなる(といけないと信じていた)ので、冬至には死刑を行わない方がよい、とされていた。
礼のおきてや法の決まりを犯すと、その軽重に従って刑罰を与え、牢屋に未決囚がいないようにし、厳冬の季節には人を死刑にはしない。
耄耋皆得以寿終、恩沢広及草木昆虫。
耄耋(もうてつ)みな寿を以て終わるを得、恩沢は草木昆虫に広く及ばん。
年寄りもすごい年寄りも、みんな(事故や刑罰でなく)寿命を以て亡くなる。その恩と恵みは、草木や昆虫にまで広く及んでいく―――。
こんな社会にしようではありませんか。
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後漢三国・曹操「対酒」(酒に対す)(「魏武侯集」より)。曹操さまはこんな国を地上に作り出そうとして1800年ぐらい前に努力しておられたのである。おれたち人民のために。玄徳やら孔明やらとは器が違いますね・・・みたいなキモチになってまいりませんか。