賓客皆笑(賓客みな笑う)(「世説新語」)
これはショック。

ここにはペンギンはいないのでイーオー!
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晋の司馬将軍であった孫楚、字・子荊は、
以有才、少所推服。
才有るを以て、推服するところ少なし。
才能がありすぎて、人に敬服することがあまりなかった。
唯雅敬王武士。
ただ、雅(つね)に王武士を敬えり。
ただ、日ごろから、中書郎の王済、字・武士だけは敬愛していた。
その王武士が亡くなり、葬儀の時には、
名士無不至者。
名士至らざる者無し。
有名な人物で来ていない者はいないほどであった。
王武士は皇帝の娘(公主さま)と結婚していた有力者でしたから、たくさんの立派な人たちと付き合いがあったのです。
子敬後来、臨尸慟哭。賓客莫不垂涕。
子敬後れ来たりて尸に臨みて慟哭す。賓客、涕を垂れざる莫し。
孫子敬はひとびとより遅れてやってきて、(みなさんが揃っている前で、)王武士の死体を見て、大声を出して泣いた。お客たちも、はなみずを流して悲しまない者はなかった。
やがて、
哭畢、向霊牀曰、卿常好我作驢鳴。今我為卿作。
哭し畢りて、霊牀に向かいて曰く、「卿常に我が驢鳴を作すを好めり。今、我、卿のために作さん」と。
(礼の規定どおり)泣き終わると、死体の寝ているベッドの方に向かって言った、
「あなたはいつも、わたしがロバの鳴き声を真似するのをみて、おもしろがっておられた。いま、わたしは、あなたのためにひと鳴きしてみよう」
イーー、オー!
体似眞声。
体は眞声に似たり。
その様子は、ほんものそっくりであった。
賓客皆笑。
賓客みな笑う。
お客たちはみんな笑った。
孫挙頭曰、使君輩存、令此人死。
孫、挙頭して曰く、「君輩をして存せしめ、此の人を死せしむるとは」。
孫子荊は振り向いて、お客たちの方に向かって言った。
「みなさんのような方々を生きさせておいて、この人を死なせてしまうんだからなあ」
天道はどうなっているのか、と言いたげに空を見上げると、そのまま去って行ってしまった。正規の儀式が始まる前に帰ってしまったのです。嫌われますよね。
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南朝宋・劉義慶「世説新語」傷逝篇十七より。本日、東京ヤクルトスワローズから、つば九郎の担当スタッフ(中の人)が亡くなったと発表がありました。大変ショックです。球界関係者もファンもショックです。氏名等公表されていないのですが、つば九郎歴30年(ちょうど成長してない期間)、推測されている人だとすると51歳。わたしより××歳も若いのです。空中くるりんぱも不達成のままだ。代わりが効かない個性なので、スワローズもしばらくつば九郎の活動については見合わせるとのこと。冥福をお祈りします。
普段有名人が亡くなっても触れることはまずありませんが、
顔淵死。子哭之慟。従者曰、子慟矣。有慟乎。非夫人之為慟而誰為。
顔淵死す。子、これに哭して慟す。従者曰く、子慟せり、と。慟する有るか。夫の人のために慟するに非ずして誰のためにか慟せん。
高弟の顔淵を死んだ。孔子はおくやみに行って、声を上げて泣いた。(尊属でもない人のために声をあげて泣くというのは礼を失している。)従者は(おそらく帰り道で)言った、
「先生は、声をあげて泣いていましたね」
「声をあげていたか。この人のために声をあげて泣かなくて、いったい誰のためにそうするのだ?」
「論語」先進篇第十一より。これぐらいの価値はある人やで。ちょうど、何かの花粉か物質のせいで、目やにが出て目が明けられません。泣いているようにも見えるであろう。