朝居厳乎(朝居、厳なるか)(「説苑」)
朝から厳しいのは困りますね。この寒いのに。

おれは緩みに緩んでいるのでわん。利益出れば雰囲気変わるわん。
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春秋の時代、斉の賢者・晏嬰が斉の景公に申し上げた。
朝居厳乎。
朝居の厳なるか。
最近、朝の会議(つまり「朝廷」)の雰囲気が厳格に過ぎませんかな。
「え?」
公はちょっと意表を突かれたみたいで、驚いて言った、
朝居厳、則曷害於治国家。
朝居の厳なる、曷(なん)ぞ国家を治むるに害あるや。
「朝の会議が厳格だと、国家を治めるのに何かさわりがあるのかな?」
「ありませんよね、ふふん」
と続けていえるといいのですが、そこまでは言えなかった。
晏先生は答えて言った、
朝居厳則下無言、下無言則上無聞矣。下無言則謂之喑。上無聞則謂之聾。聾喑則非害治国家如何也。
朝居厳なれば下に言無く、下に言無くんば上に聞無し。下に言無きはこれを「喑」(いん)と謂い、上に聞無きはこれを「聾」と謂う。聾喑なれば則ち国家を治むるに害非ざるを如何ぞや。
朝の会議が厳格だと下のやつらが何も言いません。下のやつらが何も言わないと、上の方では情報が入ってきません。下のやつらが何も言わないのは「口が利けない」といい、上の方に情報が入らないのは「耳が聴こえない」といいます。耳が聴こえず口が利けないのであれば、国家を治めるのにさわりが無いと言えましょうか。
「言える」
と言えればいいのですが、そうも言えなかったみたいで、
「うーん。厳しい方がいいかと思ったが、それもダメなのか。でもそんなことでしゃべらなくなるやつなんかごく一部やで。大概のやつらは厳格でもしゃべるやろ」
「いやいや」
晏嬰先生は言った、
合菽粟之微以満倉廩、合疏縷之緯以成帷幕。太山之高非一石也。累卑然後高也。
菽粟(しゅくぞく)の微を合して以て倉廩(そうりん)を満たし、疏縷(そる)の緯を合して帷幕を成す。太山の高きは一石のみには非ざるなり。卑(ひく)きを累(かさ)ねて然る後高きなり。
マメやアワの小さい粒も合わせると、倉庫に一杯になります。ぼろく切れ切れの糸も撚り合わせると、部屋を取り巻く厚いカーテンができあがります。太山(一番高い山)の高さは一個の石だけでできているのではありません。低いものを何個も重ねて、やっと高くなるのではありませんか。
夫治天下者非用一士之言也。固有受而不用、悪有距而不入者哉。
それ、天下を治むる者は一士の言を用うるのみに非ざるなり。もとより受けて用いざる有りとえども、悪(いずく)んぞ距(こば)みて入れざる有らんや。
ああ、同じように、天下を治めるにも、たった一人の策士の知恵だけでできるものではありません。受け入れて用いるに至らない知恵は、もちろん有るでしょう。しかし、拒んで受け入れようとしないことはあってはなりませんぞ!
「はい、わかりました」
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漢・劉向「説苑」巻九「正諫篇」より。この篇は効果的な諫言を集めた章です。働き方改革で、朝はだらけてた方がいいんです。管理よりも運営するでわん、と、誰か諫言してやってください。