性遅緩(性、遅緩なり)(「古今譚概」)
今日は北海道の知人が来たので、会食。気の利いた会話などできないので、一人でどんどん食べてしまう。普段はガマンしているのに、今日は緊張感がゆるんでしまって食べすぎてしまいました。

ある程度の緊張感がないと心身ともにゆるんでしまうんである。だがあんまり締め付けると機能が低下してダメになったりベルトが切れたりするのだ。
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唐の李文礼は、
性遅緩。
性、遅緩なり。
性格がのんびりして弛んでいた。
頭のねじがゆるんでいる、というタイプです。
時為揚州司馬、有吏自京還、得長吏家書。
時に揚州司馬為るに、吏の京より還り、長吏の家書を得る有り。
その時、揚州の司馬(警察署長)の任に就いていたが、小役人の一人が都から戻ってきて、先任の官僚の家からの手紙を預かってきたことがあった。
その手紙には、
姉亡。
姉亡す。
「お姉さんが亡くなったぞ」
と書いてあった。
李倉卒聞之、便大慟。
李、倉卒にこれを聞き、すなわち大慟せり。
李は、いい加減にこれを聞いていたが、突然、大声をあげて泣き始めた。
吏曰、是長史姉。
吏曰く、これ長史の姉なり、と。
小役人は言った、「これは先任官僚のお姉さんのことですぞ」
「ふむ」
李徐悟曰、我無姉。向亦怪道。
李、徐むろに悟りて曰く、我姉無し、向(さき)にまた道(い)うを怪しめり、と。
李はやっと理解したようすで、言った、
「わしには姉さんはおらんからな。最初は変なことを言うなあ、と思ったのだ」
以上。
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明・馮夢龍編「古今譚概」巻三より。くだらん。だが、漢文を読むということは、こんなくだらん話の中に、一片のきらめくような物語が無いか、探していかねばならないということなのである。