余為僇人(余は僇人たり)(「柳河東集」)
また体重が増え始めています。今日も食べすぎました。罪の意識は、あるのです。

毎日飲み食いの話をしているような気がする
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柳宗元が失脚して、永州令に左遷されて、数年経ちました。
こんなことを言い出した。
自余為僇人、居是州、恒惴慄。
余は僇人たりてこの州に居るより、恒に惴慄たり。
わしは、罪を得てこの州に左遷されてきてから、いつも恐れ、びくびくしているのである。
この人も、罪の意識があるようです。
だが、
其隙也、施施而行、漫漫而游。
その隙や、施施として行き、漫漫として游ぶ。
その隙間を縫って、ゆっくりと徒行し、のんびりとさまようているのである。
「施施」(しし)は、「詩経・丘中有麻」にいう、
将其来施施。(その来たるを将うる、施施たり)
彼が来るときは、ゆっくりと。
の句に拠る。「漫漫而游」は、水戸黄門「漫遊記」の「漫遊」です。人生楽あれば苦があるんです。
のんびりと、
日与其徒、上高山、入深林、窮回渓、幽泉怪石、無遠不到。
日に其の徒と、高山に上り、深林に入り、回渓を窮め、幽泉怪石も遠くして到らざる無し。
毎日、仲間たちと、山の高いところまで登り、林の深いところまで入り、迷路のような渓谷の奥を窮め、秘密の泉、奇怪な岩、遠いからといって行かないところはなかった。
どこへでも行ったんです。
到則披草而坐、傾壺而酔。酔則更相枕而臥、臥而夢。意有所極、夢亦同趣。
到ればすなわち草を披きて坐し、壺を傾けて酔う。酔えばすなわち更に相枕して臥し、臥して夢む。意の極むるところ有るも、夢また同趣なり。
行ったところでは、草を敷いて座り、持って行った酒壺を傾けて酔うまで飲む。酔うと仲間と枕しあいながら寝る。寝れば夢を見る。(しらふで)意識が究極まで思い詰めることと、夢でみることとは、だいたい同じだ。
気持ちいい。
やがて、
覚而起、起而帰。
覚めて起ち、起ちて帰る。
目が覚めると起き上がり、起き上がったら帰ってくる。
罪の意識はあるのですが、実際にはこんなふうにして暮らしているので、
以為凡是州之山水有異体者皆我有也。
おもえらく、およそ是の州の山水の異体有るものは、みな我が有なり、と。
この永州の山と水、少しでも興味を惹くような変わったのは、だいたいみんなわしのモノになった、と思っていた。
而未始知西山之怪特。
しかるに、いまだ始めて西山の怪特なるを知らざるなり。
ところが、これまで、西山の不思議で特別な景色を知らなかったのである。
そこで、行ってきました。
(行ったてみたらああだったこうだった、というところも有名なのですが、思い切って、省略。)
・・・すばらしいなあ。
悠悠乎与顥気倶而莫得其涯、洋洋乎与造物者游而不知其所窮。
悠悠乎として顥気のそなわりてその涯を得るなく、洋洋乎として造物者と游びてその窮まるところを知らず。
はるばると、天の白い光輝が広がって、どこまで続いているのわからない。ひろびろと、世界の万物を生育する本源の力と一緒にさまよい、どこまで行けるのかわからない。
引觴満酌、頽然就酔、不知日之入。
觴を引き酌を満たし、頽然として酔いに就き、日の入るも知らざりき。
この盃を飲み干し、あの杯を満たし、崩れるように酔っぱらって、太陽が沈んでいくのにも気づかなかった。
なんと。
こいつら、真昼間から飲んでたということがわかりました。
蒼然暮色、自遠而至、至無所見而猶不欲帰。心凝形釈、与万化冥和。
蒼然たる暮色の遠きより至りて、見るところ無きに至りてなお帰らんと欲せず。心は凝し形は釈け、万化と冥和せり。
青黒い闇の色が遠いところからやってきて、周りが見えなくなってきたが、それでもまだ帰りたくない。心はここに凝り固まってしまい、体は逆にとろとろに溶けてしまったようで、すべてのものと暗闇の中で一体になった・・・。
然後知吾向之未始游、游于是乎始。故為之文以志。
然る後知る、吾の向(さき)のいまだ始めて游ばずして、ここに游ぶことの始めてなるを。故にこれが文を為して以て志(し)るす。
そうなってやっと思い出した。わたしはこれまでここに来たことが無くて、ここに来たのは始めてだったのだ、ということを。そこで、この文章を書いて、記録する。
是歳、元和四年也。
この歳、元和四年なり。
今年は、えーと、元和四年、811年ですね。
この永州に来てから、七年目になったのだ。
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唐・柳宗元「柳河東集」より「始得西山宴游記」(始めて西山に宴游するを得たるの記)。文章巧いなあ、と思いますよね。「え?」というように始まって「あれ?」と流れを変えて、最後は「なるほど」と頷いてしまいます。しかも、こんな文章は彼より前に誰も書いたことが無かったのだ。それまでは四六駢儷の中身のよくわからない「おほほ」「わはは」「ざますわね」みたいな文章ばかりだったのだ、と思うと、凄いことです。
明日から週末なのでどこかに施施として行き、漫漫として游ぼうかと思うのだが、休みになると歯が痛くなるし、起きてると食べて太るし、どうしようかと悩ましいところである。