不知白黒(白黒(びゃっこく)を知らず)(「墨子」)
だいぶん暖かくなってきました。そろそろ公園でにやにやしたり、ひとを見て「うっしっし」と笑ったり、布袋さんみたいに裸で歩いたり、人間らしい生き方ができそうです。

春になるとハニワたちも古墳から出てくるぞ。
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戦国の時代、墨子が弟子たちに言いました。みなさんは弟子になって聴いていてください。
瞽不知白黒者、非以其名也。
瞽の白黒を知らざるとは、その名を以てするには非ざるなり。
「眼の見えない人は、白いと黒いの区別がつかない」というのは、一体どういう意味であろうか。「白」と「黒」という言葉を知らないということではないであろう」
「ふが」「ふへ」「ほえ」
今、瞽曰皚者白也、黔者黒也。雖明目者、無以易之。兼白黒、使瞽取焉、不能知也。
今、瞽曰く「皚(がい)なるものは白きなり、黔(けん)なるものは黒きなり」と。明目者と雖も以てこれに易うる無し。白黒を兼ねて、瞽をして取らしむれば知る能わず。
さて、いま、眼の見えないひとが「雪や霜は白いですなあ、火にかけられて黒ずんだものは黒いですなあ」と言ったら、眼の見える人も「そのとおり」と言って、これを改めることはできないであろう。ところが、白いものと黒いものを混ぜて、白いものか黒いものを取らせてみれば、眼の見えない人には取り分けることができない。
故我曰瞽不知白黒者、非以其名也、以其取也。
故に我曰く、瞽の白黒を知らざるは、その名を以てするに非ざるなり、その取るを以てするなり、と。
というわけで、わしがさっき言ったように、「眼の見えない人は、白いと黒いの区別がつかない」というのは、「白」と「黒」という言葉を知らないということではないのである。白と黒を取り分けることができない、ということなのである。
「ふがふが」「ふへふへ」「ほえほえ」
ところで、
今天下之君子之名仁也、雖禹湯無以易之。兼仁与不仁、而使天下之君子取焉、不能知也。
今、天下の君子の仁と名づくるや、禹・湯といえども以てこれを易うる無し。仁と不仁を兼ねて、天下の君子をして取らしむれば、知る能わず。
今度は、天下の御立派な方々にどんなことを「人間らしいこと」と言うか、と訊いてみるがいい。その答えは、たとえ(夏の初代王)禹や(殷の初代王)湯のような聖人賢者であっても、「そのとおり」と言って、それを変えることはできないだろう。だが、「人間らしいこと」と「人間らしくないこと」を混ぜて、「人間らしいこと」か「人間らしくないこと」かを選ばせれば、天下の君子にも選びきれないであろう。
故我曰、天下之君子、不知仁者、非以其名也、亦以其取也。
故に我曰く、「天下の君子の仁を知らざるは、その名を以てするにあらず、またその取るを以てするなり」と。
そこでわしは言おう、「天下の御立派な人たちが「人間らしいこと」を知らないのは、言葉の意味がわからないのではない。その行動を選ぶことができない、ということなのである。
「うへうへ」「にやにや」「ぐひひひ」
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「墨子」貴義篇より。みなさん何とかわかったようですね。さあ、それでは、実際に「仁」と「不仁」を選び分けてみましょう・・・ああ、違う、そっちではないのに!! 選択は難しいですね。