敬勝怠者(敬、怠に勝れば)(「大戴礼記」)
雨も降っております。

人間に溺れるよりは魚類に溺れる方がいいかもよ。
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昨日の続きです。
太公望さまが読み上げた「丹書――赤の本――」の内容は・・・
敬勝怠者吉、怠勝敬者滅。
敬の怠に勝るものは吉、怠の敬に勝ものは滅せん。
「つつしみ」が「なまけ」にまさっているなら、その人にはいいことがある。
「なまけ」が「つつしみ」にまさっているなら、その人は滅んでしまうだろう。
義勝欲者従、欲勝義者凶。
義の欲に勝るものは従われ、欲の義に勝るものは凶あらん。
「ただしさ」が「したい放題」にまさっているなら、その人は順調になる。
「したい放題」が「ただしさ」にまさっているなら、その人には悪しきことがあろう。
事不強則枉、弗敬則不正。
事に強ならざれば則ち枉(まが)り、敬ならずば則ち正しからず。
物事をやりきる強さがなければ、途中で曲げられてしまうだろう。
「つつしみ」を忘れていれば、「ただしさ」は失われてしまうだろう。
枉者滅廃、敬者万世。
枉者は滅廃し、敬者は万世ならん。
曲がってしまった者は滅び失われてしまうだろう。
「つつしみ」を忘れない者はよろずよまでも栄えなむ。
基本的にはこれだけなんです。
その後に、十四の「銘」がある。これを、目に触れるいろんなところに刻み込んで、常日頃から忘れぬようにせよ、というのである。
十四全部ご紹介すると来年になってしまうかも知れないので、印象的なのをいくつかご紹介します。
几銘(机に刻んでおけ。):皇皇惟敬、口口生敬。口生垢、口戕口。
皇皇としてこれ敬し、口口に敬を生ぜよ。口は垢を生じ、口は口(こう)を戕う。
一番後ろの「口」は「人口」の「口」で、民衆のこと。
大いに明らかに、つつしみ深く、一言一言につつしみを生じるように。
口からは汚れたことが出てくるだろうし、口から出るもので民衆を痛めつけることもあるのだから。
鑑銘(鏡に刻んでおけ。) ・・・ 昨日紹介済みです。
盤銘(お皿に刻んでおけ。):与其溺于人也、寧溺于淵。溺于淵、猶可游也。溺于人、不可拯也。
それ、人に溺るるよりは、むしろ淵に溺れよ。淵に溺るるはなお游すべきなり。人の溺るるは、拯うべからず。
人間に溺れてしまうよりは、川の深いところで溺れる方がよい。
深いところで溺れた時には、もしかしたら泳げるかも知れないが、人間に溺れた時には救われる方法が無い。
杖銘(杖に刻んでおけ。):於乎、危于憤懥。於乎、失道于嗜欲。於乎、相忘于富貴。
ああ、憤懥において危うし。ああ、道を嗜欲に失わん。ああ、富貴に相忘れんか。
(杖があれば、正しい道を安全に歩いていけるはずなのに、)
ああ、怒りいきどおり、危険なところを歩いている。
ああ、欲望にくらんで道を踏み外してしまっている。
ああ、(それというのも、)財産と地位を得て、(身を支えることができたと思い、杖を)忘れてしまったからだ。
こんなのがまだまだ続くので、退屈でしょうから、今年はここまで。
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「大戴礼記」武王践祚篇より。明日は予定稿も含めてお休みします。したがって、今年はここまでです。よいお年をお迎えくだされ。