其声在翼(その声、翼に在り)(「酉陽雑俎」)
↑これはなにものでしょうか。

こいつらではなさそうです。
・・・・・・・・・・・・・・・
唐の時代のことですが、
長安秋多。
長安、秋に多し。
それは、長安では秋に多くなる。
長安にいたころ、
常日読百家、頗為所擾、触睫隠字、駆不能已。
常日、「百家」を読むに、頗る擾するところとなり、睫に触れて字を隠し、駆すれども已む能わず。
わたしは毎日「諸子百家」の本を読んでいたが、そいつらは大変邪魔をし、まつげに触って文字を読めなくする。追い払ってもやめさせることができない。
ネコかも?
偶拂殺一焉。細視之、翼甚似蝉、冠甚似蜂。
たまたま払いて一を殺せり。これを細視するに、翼は甚だ蝉に似、冠は甚だ蜂に似たり。
「うるさいなあ」と手で払ったとき、たまたま一匹が、ぐにょ、と死んだ。そこで拾いあげてじっくりと観察してみたところ、羽はセミにたいへん似ている。頭頂部はハチにたいへん似ている。
これはネコではありませんね。
生態を見ていると、
性察于腐、嗜于酒肉。
性、腐に察し、酒肉に嗜みあり。
本質的に、ものが腐ったかどうかに敏感で、お酒と肉類は大好きらしい。
「もう少し観察してみよう」
と何匹が捕まえて、
按理首翼。
按じて首・翼を理(おさ)む。
頭と羽をいろいろ調べて研究してみた。
頭を取ったり、羽をむしったりしたのかも知れません。
其類有蒼者声雄壮、負金者其声清聒、其声在翼也。
その類に蒼者有りて声雄壮、金を負う者はその声清聒(せいかつ)、その声は翼に在り。
その中に体色の青黒いものがいて、これはたいへん大きな音を立てる。また、背中が金色のものは、清らかだがうるさくてかなわない。いずれも音は(頭ではなく)羽から出ていることがわかった。
また、
青者能敗物。巨者首如火、茅根所化也。
青きものはよく物を敗る。巨なるものは首火の如く、茅根の化するところなり。
青緑色のものはモノを腐敗させる力が強いようだ。特にでかいやつがいて、これは首のところが火のように赤い。これはカヤの根っこが変化したものだということだ。
カヤの根は違うんでは。
・・・・・・・・・・・・・・・
唐・段成式「酉陽雑俎」巻十七より。答えは「蠅(ハエ)」です。それにしてもこれ書いている人は調べるのが好きなんでしょうね。ハエの頭取ったり羽むしったりしてみましたが、今度は「ネコも試してみるか、ひっひっひ」と思っているかも。そのうち、「では、人間はどうなのかな・・・」と思いつくかも。