誠何心哉(誠に何の心ぞや)(「鶴林玉露」)
世の中いろんな人がいますが、生成AIの前ではひとえに風の前のともしびにおなじ。

妖怪は、みんなぱっと出てぱっと消える。
・・・・・・・・・・・・・・・
自古豪傑之士、立業建功、定変弭難、大抵以無所為而為之者為高。
いにしえより豪傑の士、業を立て功を建て、変を定め難を弭(ゆる)め、大抵為にするところ無きを以てこれを為す者、高しと為す。
原始・古代よりの傑出した人材というのは、仕事を仕上げ功績を立て、変動する世の中を安定させ困難な状況を緩和してきたが、一般にいえば、それによって利益を得ようとせずに仕事をした人が、評価されるものである。
三代人物、固不待言。
三代の人物は、もとより言を待たず。
夏・殷・周の大昔の人たちは、みんな自分の利益など考えずに働いていたので、とやかく言う必要はあるまい。
春秋末、越王句践を覇者にするのに力を尽くした范蠡は、呉を滅ぼした後、
扁舟五湖。
五湖に扁舟す。
小さな小舟で江蘇の五つの湖のかなたへ旅立ってしまった。
戦国の魯仲連はその舌先三寸で趙を救って秦を破り、一通の手紙で斉を助けて燕の聊城を開城せしめたが、いずれの謝礼も断って、東海のほとりに隠れ住み、
吾与富貴而詘於人、寧貧賤而軽世肆志焉。
吾、富貴にして人に詘(くつ)せんよりは、むしろ貧賤にして世を軽んじ志を肆(ほしい)ままにせん。
「わしは財産や地位を得る代わりに誰かの指図を受けるより、貧乏で身分が低くても、世の中を見下してやりたいように生きている方がいいんじゃ」
と言ったという。・・・(「史記」魯仲連伝)
漢の高祖の参謀として帷中に策をめぐらした張子房は、漢が成立すると官職を断って、
飄然従赤松子游。
飄然として赤松子の游に従えり。
風に吹かれるように飄飄と、古代の仙人・赤松さまの教えに従って、道家の修行をしていた。
この三者は、
皆足以高出秦漢人物之上。
皆、以て秦漢の人物の上に高出するに足る。
どのひとも、秦や漢の時代の最高の人物のもう一つ上に出ているといえるであろう。
まことに李太白の詩にいう、
事了拂衣去、深蔵身与名。
事了すれば衣を拂いて去り、深く身と名を蔵せん。
事を成し遂げ終えれば、衣をはらって(立ち上がり、そのまま)去っていき、
身も名前も深く隠してしまうがよい。
のとおりである。
ところが、
世降俗末、乃有激変稔禍、欺君誤国、殺人害物、以希功賞者。是誠何心哉。
世降り俗末し、すなわち変を激し禍を稔らせ、君を欺き国を誤ち、人を殺し物を害し、以て功賞を希(のぞ)む者有り。これ誠に何の心ぞや。
世の中はさらに悪くなり、風俗は最低になり、いまでは、変動を激しくし禍をもたらし、主君をだまし国家を誤らせて、多くの人を死なしめ財物を破壊し、それによって出世や褒賞をもらおうとするやつらがいるのだ! いったいこいつらの心の中はどうなっているのか。
怪しからんですなあ。
・・・・・・・・・・・・・・・
宋・羅大経「鶴林玉露」乙編巻四より。まったく怪しからん・・・と思いかけたのですが、よく考えると筆者の羅大経は南宋の人。もう800年も前のことである。今ではこの仕事(変動を激しくし禍をもたらし、君を欺き国を誤まち人を殺し物を害し・・・)はマス〇ディアがやっているんでしたっけ。でも〇ディアの人も、間もなくAIにお株を奪われてこちらに掃き出されてくると思うので、もうすぐみんな仲間になっちゃうよ。