殺人不見血(人を殺すも血を見ず)(「鶴林玉露」)
これは得意です。お任せあれ。・・・という人もいると思いますよ。

おれたちと違って舌先の毒はじわじわと効いてくるのだコ。震えて眠れでコ。
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宋の時代なんですが、
世伝聴讒詩。
世に「聴讒詩」なるもの伝わる。
世上によく知られているものに「讒言を聴いちゃったのうた」というのがあります。
その歌に曰く、
讒言謹莫聴、 讒言は謹んで聴くなかれ、
聴之禍殃結。 これを聴けば禍殃結ばる。
讒言は聴かないように気をつけて。
それを聴いたらその瞬間に「わざわい」が降りかかることが決まってしまう。
君聴臣当誅、 君聴けば臣正に誅さるべく、
父聴子当決、 父聞けば子まさに決さるべく、
夫妻聴之離、 夫妻これを聴けば離れ、
兄弟聴之別、 兄弟これを聴けば別れ、
朋友聴之疏、 朋友これを聴けば疏し、
骨肉聴之絶。 骨肉これを聴けば絶ゆ。
主君が聴いたら部下がぶっ殺され、
おやじが聴いたら子どもが勘当、
夫婦で聴いたら離婚する、
兄弟で聴いたら別居する、
友だちが聴いたら付き合いなくなり、
親類が聴いたら義絶する。
堂堂八尺躯、 堂堂たる八尺の躯も、
莫聴三寸舌。 聴くなかれ三寸の舌を。
身長1,8メートルの堂々たるひとも
九センチしかない舌(の言うこと)を聴いちゃダメ。
舌上有龍泉、 舌の上には龍泉有りて、
殺人不見血。 人を殺すも血を見ざりき。
舌の上には龍の泉があって、そこから猛毒が湧いてくるから、
讒言を聴いたら、血も流さずに人が死んでいく。
なかなかいい詩である。
不知何人作、詞意明切、類白楽天。
何人の作やを知らざれども、詞意明にして切、白楽天に類せり。
いったい誰が作った詩かはわからないのだが、ことばの意味は明確で、しかも切実。まるで白楽天が、今の時代に生まれ変わって作ったかのようだ。
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宋・羅大経「鶴林玉露」丙篇巻六より。予定稿なんですが、うまくアップできたでしょうか。(肝冷斎は今頃、どこをさ迷っているのであろうか。どうせままならぬこの世のことに毒づいているに違いないのだが)
もしかして、讒言と国民分断やポピュリズムは同じ構造かも。そんなことになったらテレビもユーチューブも見られませんから、まさかね。