10月10日 なんかの愛護デーだ

令人掩鼻(人をして鼻を掩わしむ)(「籜廊琑記」)

歴史的なエピソードとか名言とか追いかけていると人間が小さくなってしまいます。時には、↓こういう話が心身にいいと思いますよ。わしは好きだなあ。にやにや。

ようかい愛護デーか?

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清の終わりに近いころ、河南・開封城の城門には、紅姑娘という狐女が住んでいるといわれていた。

端麗明慧、好着紅色衣、故人以紅姑娘呼之。

この姑娘といいますか、狐女、門番の老兵と仲が良くて、その宿直の日にはよく城門に遊びに来るのであった。

有少年健児聞其事、謂翁曰、渠為翁女、我願為翁婿、事翁当如子。

老兵がそのことを狐女に話すと、

女怒曰、斫頭児、乃敢肆狂言、穢爾姑娘耶。

「す、すまん」

しかし、その後、兵士は毎晩のように老兵の宿直室に来て、狐女を物色し、時に声をかけたり馴れ馴れしげに近寄ったりするのであった。

一夕、卒未帰、健児潜伏翁榻。

為所捉、酷不放手、強与狎。

すると

女哀曰、已入爾手、尚何能逃。但此翁衾也。何可与爾共綢繆。請与同至奴寝、作長夜之歓、何如。

「そ、そうかい」

健児信之。引至一小室。

そこは、

蜃窗繍闥、蘭蕙盈階、花香溢入榻際、羅帷錦被、生平未睹。

―――城門の一画にこんな部屋があるはずないではないか。

というような分別はもう働かなかった。

是時、健児早沈酔郷、力不可支、甫臨榻、玉山遽頽。

「世説新語」容止第十四にいう、晋の嵆康は

身長七尺八寸、風姿特秀。

友人の山濤が評していう、

叔夜之為人也、巌巌若孤松之独立。其酔也、傀俄若玉山之将崩。

「傀俄」(かいが)は大きなものが崩壊する様子のオノマトペ。「ぐらぐら」「がたがた」です。

この故事から、酔っぱらって倒れてしまうことを「玉山が頽(崩)れる」といいます。

―――さて。

比凌晨、有登厠者、聞齁声四起、見一人横臥屙側。糞溺不弁顔面、尚呶呶作狎語。某以足蹋醒之。

「あわわ、こ、ここは?」

昨日所見蘭蕙錦繍、皆溷物也。

それだけでは済まなかったんです。

自是得口臭疾、日逐市廛。雖相去数十百歩外、令人掩鼻、輒不可近。

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清・王守毅「籜廊琑記」巻六より。スカッとしましたか? 荒唐無稽で、ストレス解消になったのでは? みなさんも口の病気に気をつけ・・・今日は目の愛護でした。口は関係ありませんね。まあ、いろんなことに気をつけてください。みなさんを見て、遠くから道徳的に鼻を蔽っている人もいる・・・かも知れませんよ。

今日は会社に偉い人を呼んでお話を聴きました。わしら老兵ではなく、若い人のためになるといいのですが。

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