復沈水底(また水底に沈みぬ)(「東軒述異記」)
ああ、また何もやる気がなくなってきました。やる気の出そうな話でも聞きたいものだ。

そろそろゲームオーバーかも・・・。
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こんなお話は如何でしょうか。
清の時代のことでございますが、江西・分宜県から10~20里(5~10キロぐらい)離れたところに臨江山という山がありました。
その山の長江側の岩壁に、
有一大石似碑、長可二丈、濶可七尺、就山石鑿成、上下四方皆山石也。
一大石の碑に似たる有り、長さ二丈ばかり、濶(ひろ)さ七尺ばかり、山石に就きて鑿成され、上下四方みな山石なり。
大きな石が一つあって、まるで石碑をそこに嵌め込んだみたいにみえた。高さは6~7メートル、幅は2メートルぐらいあって、山中の岩石を削って作ったのであろうか、上下も四方もみな山石ばかりなのである。
この碑(みたいな石)には、何か書いてあります。
上有楷書四行、毎行八字、筆画模糊、不能尽読。
上に楷書四行、毎行八字、筆画模糊として、ことごとくは読む能わず。
上の方に楷書で四行、毎行八字、ということは三十二文字になりますが、(楷書のくせに)なにやら筆画がぼんやりしているようで、全部を読むことはできなかった。
楷書が読めない、ということは無いですから、漢字ではない文字なのかも知れません。
相伝碑下江中有仙人遺下金船七隻。満載金宝、沈此水底、此碑乃仙人遺筆也。
相伝うるに、碑下の江中に仙人の遺下せる金船七隻あり。金宝を満載し、この水底に沈み、この碑は仙人の遺筆なりとす。
ひとびとの間の言い伝えでは、碑の眞下の川の中に、仙人が遺した黄金の船七隻があって、黄金や宝石を満載してこの水の中に沈んでいるのだ、この碑の文字は仙人直筆の遺書だ(から読めなくて当然だ)。
というのである。
そして、
如有能尽読碑字、則七船浮露以贈。
もし碑字をことごとく読むを能くする有れば、すなわち七船浮き露(あら)われて以て贈られん。
もしも碑の文字をすべて読み上げることができたなら、その時は七隻の船がすべて水中から浮き上がって現われ、その船と荷物は読み上げた者のものとなる。
のではないかと言われ出した。
うそだと思ってはいけません。
曾有異人読至三十字。
かつて異人、読みて三十字に至る有り。
以前、不思議な人が読み上げて、30字までいったことがあった。
山々は低く山鳴りをはじめ、江の浪は騒ぎ・・・、そして、見よ。
七船帆檣尽露。
七船の帆檣ことごとく露われたり。
七隻の船の帆と帆柱がすべて水上に現れたのだ。
しかしながら、
因二字不能読、復沈水底。
二字の読む能わざるに因りて、また水底に沈めり。
あと二文字が読めなかったせいで、船はまた徐々に水底に沈んで行った。
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清・東軒主人「述異記」下より。全部読み切れなくて正解だったと思います。もしも読み切れてたら、
どかーん
と大爆発などが用意されていたのでは。
個人的にはいい話でした。よし、やる気が出て・・・。