1月1日 御挨拶の前に大地震が来た

遇知音必破(知音に遇わば必ず破れん)(「山谷題跋」)

おめでとうございます、と言おうとしたら、能登で大地震。まだ被害の全容がわかりませんが、相当のことが起こっているのだと思います。寒くて苦しいけどみんなでがんばりましょう。

もっとおめでたい絵を考えていましたが、今年は年賀は申し上げません。

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陰陽の不調で笛も裂ける。正月元旦から大地も海も裂けることがあるのです。

北宋のころ、呉無至というひとがいて、宰相・晏殊の家でよく酒を飲んでいた。

二十年時、余屡嘗与之飲。飲間喜言士大夫能否、似酒侠也。

その人が、

今乃持筆刀行売筆于市。

作無心散卓、小大皆可人意。

「無心散卓」だけ語義の説明が要ります。「芯が無く」「ぐねぐねと草書を書いても、筆先がばらけてしまわない軟らかな」筆のことです。

しかしながら、今の流行りは、

著臂就案、倚筆成字。

と言われる宣城の諸葛氏製作の筆であった。

故呉君筆亦少喜之者。

だが、呉君の筆は、

使学書人試提筆去紙数寸、書当左右如意所欲、肥瘠曲直皆無憾。然則諸葛筆敗矣。

唐の時代、許雲封が言っているように、

笛竹陰陽不備、遇知音必破。若解此処、当知呉葛之能否。

宋・黄山谷「山谷題跋」より「書呉無至筆」(呉無至の筆を書す)。ところで、許雲封が言う「笛竹が知音に遇えば必ず破る」とはどういうことでしょうか。これは、北宋期に編纂された「太平広記」に記載されている次の物語に典拠があります。

・・・試みに一本の笛を吹くように命ぜられた許雲封が、申し上げた。

以今年七月望前生、明年七月望前伐。過期不伐、則其音窒、未期而伐、則其音浮。

浮者、外澤中乾。乾、受気不全。気不全則其竹夭。

其已夭之竹、遇知音必破。

「さて、この笛は如何でしょうかな」

許雲封は、

捧笛吹六州遍、一畳未尽、騞然中裂。

という。「太平広記」巻二百四所収「甘澤謡」より。

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