瓦解冰消(瓦のごとく解け、冰のごとく消ゆ)(「寒山集」)

わらしべ的冒険資本主義によって富を得た人もいるであろう。
今日も諦念に満ち宗教的な気分濃厚である。
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この世には実に立派な人がいるものである。
余曾昔覩聡明士、 余、曾昔(かつて)聡明の士を覩るに、
博達英霊無比倫。 博達にして英霊、比倫無し。
わしは、以前、聡明な方を見たことがある。
知識は広く精神は英邁、くらべる仲間も無いほどじゃった。
一選嘉名喧宇宙、 一たび選ばれて名は宇宙に喧(かまびす)しく、
五言詩句越諸人。 五言の詩句は諸人に越ゆ。
あるとき、選ばれて出世して、その名前はあちこちで騒がれた。
五言(あるいは七言でもいいんですが)の詩を作らせれば、どんな人もかなわない文学的才能があった。
「一たび選ばれる」は、唐代では科挙試験を受けて合格して「進士」さまになった、ことを言うのだと思いますが、現代的には「その能力を見込まれて出世した」ということです。
為官治化超先輩、 官と為りては治化、先輩を超え、
直為無能継後塵。 ただに後塵を継ぐを能くする無しと為せり。
官僚(政治家、企業家、なんでもいいんですが)となって民草を治め教化して先輩たちをみな追い越し、
ただただ、彼の蹴立てていった土ぼこりにさえ、ついていくことは難しい・・・。
というほど有能で立派なやつだった。みなさんみたいかも。
のだが、
忽然富貴貪財色、 忽然たる富貴に、財色を貪り、
瓦解冰消不可陳。 瓦のごとく解け冰のごとく消えて陳(の)ぶるべからず。
あっという間に豊かに地位高くなってからは、財産と色欲を貪りはじめ、
瓦が砕けるように、氷が解けるように、ダメになってしまってお話にならない。
とはいえ、そこそこ富貴なんだとは思いますけど。
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「寒山集」より。みなさんそんな「お話にならない」ことにならないよう、気をつけてくだされよー。財や色よりカスミを食うようにしてください。だが、カスミは不味い。今日も晩飯自炊してカスミのようなもの食ったが不味かった。だが、何故かカロリーはあるらしく、体重は増えたのだ。